ミステリアスなストーリーと画が、ピッタリ噛み合っている。しかし、あまりに個性的なキャラクターデザインに好き嫌いが左右されて読む前に評価されてしまいそうなマンガ。山岸涼子氏の作品は、キャラクターデザインがどうしても受け入れられなかったが、この作品に限り惹きつけられた。厩戸のデザインを一目見て読みたいと思った。これも厩戸の力というものか。
【白泉社文庫版全7巻】
第一印象
第一印象は、怖い顔。でもどこか神秘的というものだった。画力はともかくオシャレな感じの絵が多く連載されていた当時のLaLaでは、「黒のもんもん組」と並び異色なキャラクターデザインだった。山岸氏のキャラクターの顔は、今見ても、ちょっと怖い。ただし、日本史でおなじみであるが、実在も含めて謎に包まれている聖徳太子の物語を描くということと、"聖徳太子のキャラデザがこう来るのか!凄い!"という驚きで惹きつけられ、更に読むにつれて、そのストーリー自体にも引き込まれていった。
当時の腐女子的なもの
当時学校で、クラスで2人の女子がはまっていて、登場人物である刀自古郎女、布都姫の名で互いを呼び合っていた。周りはこの2人を、避けてはいなかったが、自分たちとは違うタイプだとは思っていたと思う。特に私を除く男子は、そもそもこのマンガを知らないのだから、何だこいつらと思っていたに違いない。関わってはいけないみたいな感じで。ただ、自分は、この女子たちがどうのというのでなく、とにかくこのマンガは読んでいたので、「俺は分かるぞ、その会話!」とは思っていた。まあ、思うだけで話に加わることはなかったし、そもそもLaLa読んでいることさえ言っていなかったけど。彼女らは今なら完全に腐女子とカテゴライズされるのだろう。外見もそんな感じの2人組だった。この2人、刀自古郎女、布都姫と互いを女性登場人物の名で呼び合っていたが、なぜ主人公の厩戸王子、蘇毛人と呼び合わなかったのだろうか。今現役の腐女子ならばどうなのだろうか。彼女達は今どうしているのだろうか。同窓会があれば聞いてみたいが、まあ、同窓会あってもこちらは行かないだろうし、向こうも来ないだろう。
目から光
劇画タッチで目から光という描写も衝撃的であった。まあ、北斗の拳でも似た描写はあって、やはり"タダ者ではない"、"超能力者"という描写にはピッタリなのだろうが、厩戸の怖さを表現するのに本当にピッタリな描写だった。
美しいカラーページ
LaLaの表紙やカラーページは美しく、細かいところまで描かれているので、額装すれば部屋に飾れるレベルだったと、当時は思っていた。手元にないので今見たらどうかはわからないが、文庫版の表紙を見る限り、やはり額装が成り立つレベルだと思う。当時、美しい画を描く作家はLaLaにも他にたくさんいたけれど、額装が似合うのは山岸氏が一番であると思う。まあ、LaLaはバランスの良いマンガ雑誌で、ヘタウマというレベルを超えて明らかにデッサン勉強中レベルであるが何故か引き込まれる魅力のある漫画も掲載されていたし、山岸氏のように、絵だけでも引き込む魅力のあるマンガも掲載されていた。