Golden Time

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【1980年代】北斗の拳


無数の人に語られ尽くされているであろう北斗の拳。パチンコ店のチラシもいつ見てもケンシロウかラオウのご尊顔が写っている気がする。

本当に強い人

本当に強い人は、やはりアミバ様だ!

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第6巻でのご活躍は素晴らしい。本来南斗の使い手であるのに、独学で北斗神拳を習得し、ケンシロウに兄であるトキだと思わせたのだから。最終的にケンシロウに"断じてトキではない"と言わせたのは、逆にアミバの能力の高さを物語る。なぜなら、明らかなトキのニセモノに"断じて"などという言葉を使う必要がないからである。本当にトキだと思っていたからこそ、"断じて"なのであり、ケンシロウが見事に騙されたさるほどに強いから、トキの拳をコピーできていたからこその言葉なのである。幼少期に共に拳を交わしあった兄弟それも北斗神拳後継者争いをしていたトキと見紛うのだから、アミバの能力は尋常ではない。幼少期から北斗神拳習得のために修行した者と、その拳法の伝承者が間違えるということの意味。ラオウもサウザーもシンも最終的にケンシロウに倒されるのであるから、アミバもラオウ、サウザークラスに連なる強さであることは間違いない。アミバによる犠牲者の数は、ラオウ達によるものよりはるかに少なく、徒党を組んで手下に悪虐なことをやらせることもしていないので、極悪人揃いの北斗の拳の中では、相対的に良い人というか、マシな人の部類に入るのではないだろうか。そういう意味でアミバは、性格はともかく、その武道の能力はもっと評価されて良い人物である。

偽史としての北斗の拳

北斗の拳は、一子相伝である北斗神拳の立場で描かれた物語である。このため、北斗神拳が最強でなければならない。弱い者には容赦のないシンやサウザー、ラオウがもうあと一突きで倒せるにもかかわらず、ケンシロウにとどめを刺さないのもこのためである。もし北斗の拳が史実(そんなものあるわけないのだが、仮にあるとして)として検証されるならば、見えてくるものがある。たとえば、神話の英雄譚には実在する複数人物の武勇伝を1人の武功として語っていると思われるものがよくある。これを北斗の拳に当てはめてみるとどうなるだろうか。ケンシロウという人物は1人ではなく、4〜5人のケンシロウ的な人物の話をつなぎ合わせたものと考えることはできないであろうか。奇しくも北斗の拳には、北斗神拳伝承者候補として、ラオウ、トキ、ジャギ、ケンシロウと4人もいる。北斗の拳が、一子相伝でないとして、4兄弟の話をつなぎ合わせたものと仮定すると見えてくるものがある。まずシンに敗れたのは4兄弟のうちのジャギであるということ。ジャギはケンシロウの真似をして胸に7つの星を自らつけたことになっているが、ジャギが本来の筆頭伝承者で、伝承者は自ら胸に7つの星をつけるというのが北斗神拳の掟だったとする。そうすると、ジャギは4兄弟の筆頭伝承者となり、そのため伝承者の証として"自ら"胸に7つの傷をつけたことになるので、物語中のジャギが自ら傷をつけたことと一致する。物語中ではケンシロウは、シンに傷を意思に反してつけられている。しかしこれは少し変である。シンはユリアの前でケンシロウに1つずつ指を刺していくのであるが、ユリアがシンのものになることを承諾するまで刺していくというのにユリアは北斗七星が完成するまで承諾せず、完成したところであっさり承諾する。これはおかしくないか?あたかもユリアが北斗七星の完成を待っているかのような不自然な行為である。ケンシロウへのダメージを考えたら、もっと早い時間にギブアップすべきである。何故北斗七星完成まで待つ必要があるのか。もしくはそこまで待ったなら、もっと見届けるべきではないのか。この辺りに違和感があるのは、それが後付けの偽史だからと考えると納得できる。シンに倒されたのは、筆頭伝承者のジャギで、1つ1つ傷をつけるなどということはせず、あっさりシンに倒されたと考えるとどうだろう。ジャギが倒れたことにより、次点のケンシロウが昇格して筆頭伝承者となった。そのためケンシロウは筆頭伝承者として自ら胸に7つの傷をつけることとなった。つまり、シンに筆頭伝承者が倒されたために、後継者が7つの傷を自らつけたのであるが、この話が、一子相伝の無理な設定をつけたことにより変化し、ジャギの筆頭伝承者としての存在が消され、ケンシロウが唯一の伝承者となったため、ケンシロウがシンに倒され、そこで初めて7つの傷をつけられるという話になったのである。

ユリアについても、実は南斗最後の将であるので、マンガの設定であるケンシロウとユリアが元々相思相愛だったというのは理解しがたい。シンとユリアは同じ南斗の将なので行動を共にしていたことにおかしなところはない。故に、マンガにおけるシンとケンシロウの戦いは、筆頭伝承者ジャギが、ユリアとは無関係の理由、おそらく南斗聖拳と北斗神拳の派閥争い的な理由で、シンに挑んで敗れたが、その後を継いだケンシロウがジャギの敵討ちに成功し、ユリアを人質として連れて行こうとしたところ、失敗したというだけの話ではないか。失敗したが、ケンシロウは北斗神拳伝承者として南斗の将狩りを続け、結局ユリアが1人になるところまで南斗狩りが進んだため、ユリアは生き延びるため、白旗を上げてケンシロウの妻となった…こう考えると納得できる話となる。

一子相伝の制約を外して、複数人の武勇伝を1つにしたものと考えれば、北斗の拳の無茶なエピソードは、意外に整合性の取れた物語になるのである。

199X年とはいつなのか、どこなのか

もう過ぎた過去じゃんというのはツッコミとしては二流。連載開始時に、近い将来やってくる世紀末だから便宜上199X年としただけで、このマンガの舞台が、異世界や地球以外の星での出来事ではなく我々の生きるこの地球であり、21世紀以降の近未来の話であるということだけが重要なのだ。そもそも西暦何年なのかは、ストーリー上、全く意味を持たない。ただ、ではそれはいつなのだろう。そもそも199X年が未だ来ていない未来だとして、一子相伝の北斗神拳は今現在どこで伝承されているのだろうか。

舞台としては、ラオウたちを倒した後、海を渡って修羅の国に行く。修羅の国でもそのまま言葉が通じていることから、これは多くの人に言われる様に本州から九州に渡ったと考えるのが素直であり、北斗の拳は日本が舞台といえよう。拳法の話なので、中国ということも考えられるが、第1話で村の長老が"中国より伝わる恐るべき暗殺拳があるときく…その名を北斗神拳…"とか言っているので中国ではない。まあ、ジャンプに連載されていたのであるし、日本が舞台と考えるのが素直だろう。ただし、ラオウやサウザーの拠点が今で言う何県なのかまでは分からない。ビルの建つ平地も多いし山もありヒントは多そうであるが、日本にはそんなところはたくさんあるし、ケンシロウの移動距離も分からないので。

とにかくツッコミどころしかない

細かいことを含めればキリがないほどツッコミどころがあるのがこのマンガ。それこそ多くの人に言及されている。そこは少年ジャンプ連載だから仕方がないし、その設定が自由自在に変わるところが、ストーリーのテンションを常に高く保つ効果を生み出しているのだろう。

一子相伝の無意味さ

しかし、そもそも、現代・未来において、"一子相伝の武道の世界"というものがあるのだろうか。"武道の世界"がないと言っているのではない。"一子相伝"がないと言っているのである。一子相伝は、伝承者が倒れたらそれで伝承が断絶するわけで、リスクが大きすぎる。リスク管理上、その様な方法を採るのは余りに稚拙だ。何代も伝承されることを前提にするならば、伝承が数時間で済むのならばともかく、何日、何カ月、何年もかかるのであれば、伝承者が次代を育成中に倒れることは、それほど珍しくないだろう。そうなればそこでその武芸は断絶する。一子相伝をうたう武芸が、真の暗殺拳で、いま現在、存続しているということは、その武芸の発祥がそれほど昔の話ではなく、まだまだできたばかりということではないだろうか。もしくは、世の中からは見向きもされない非実用的な武術で、細々と続いた伝承、もしくは、単なる趣味サークル的に存在しているのではないか。

イチゴ味

ツッコミどころを逆手に取ったイチゴ味なるマンガがある。なんだこりゃ、こんなの本人監修による便乗商法じゃないか。面白いけど。

色違い

右上の巻のタイトルの三角の色が紫からピンクになっている。というか、これ日焼けなのだろうか。そうでなければ、この変更は何故なされたのであろう。素人だけれど、新しい方が見やすい配色な気もするが。こんなところをわざわざ変更したりするのだね。

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