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【キャンディ・キャンディ】ニールとイライザの兄弟愛


「キャンディ・キャンディ」の主要メンバーにおける兄弟といえば、ニールとイライザのラガン兄妹とステアとアーチーのコーンウェル兄弟の2組が挙げられる(キャンディとアニーは養子だから除外するとして、アンソニーは一人っ子、パティも恐らく一人っ子。テリィは少し複雑であるが実質的には一人っ子)。ここでは、そのうちのラガン家の兄妹の仲について考えてみる。

悪さはいつも一緒に

ニールとイライザは基本的に一緒にいる。結果的にキャンディに惚れることになる、ニールが街で暴行を受けているのをキャンディが助ける事件以降はキャンディ絡みでニールの単独行動がかなり出てくるが、それ以前は大抵2人で登場する。特にキャンディがラガン家にイライザの話相手として来たあたりは、夫婦漫才のごとく2人で1つの人格かのようなセリフと行動の連携ぶりであった。

ニールとイライザ唯一の兄妹喧嘩

この2人は作品中、兄妹喧嘩をしたのは1シーンのみ。ニールがキャンディに熱を上げて、遂にエルロイ大おばさまからキャンディに、ニールと婚約させると言わせることに成功する。その直前に、イライザは「いいわよ おにいさまなんて もう絶交だわ!」と叫び部屋を飛び出している。それでもその3日後の婚約式の場にイライザは、ちゃんと出席している。キャンディとウイリアム大おじさまによる婚約しない宣言が飛び出すまで、ニールはキャンディと結婚する気満々であったわけだから、絶交状態にありながらイライザは式の会場に来ている。しかも婚約式の企みが失敗に終わった際、泣くニールに対し「おにいさま あちらにはきっと キャンディなんかより すてきな女の子が いっぱいいるわよ」と慰めの言葉をニールにかけている。イライザは、なんと兄思いの妹なのだろう。

ブラコンな訳では無い

しかしイライザはブラコンな訳ではない。イライザは真意不明(※)ながらデイジーという女子をニールのガールフレンドにどうかと紹介してさえいる。

※:この時点でイライザはデイジーとは友人ではなく、「このあいだのパーティーで」「あたしたちいい友達になれそう」と言っていることから、デイジーとは知り合って日が浅く親友を紹介するというわけではない。また、「 資産家の娘よ」「うまくとりいっとけば キャンディをシカゴからおいだすのに 協力してくれるから…」と言っていることから、何らかの企みも持っていることは伺える。また、デイジーをニールに1度ならず2度引き合わせようとしている。ただし、これだけではイライザのニールに向かっての発言ではあってもイライザの真意は分からない。ただし単純にキャンディを追い出すためだけ、ニールにガールフレンドをあてがいたいだけ、というわけではなさそうではある。

イライザの研ぎ澄まされた観察力

イライザがニールにデイジーを紹介しようと動き始めたのは、ちょうどニールがキャンディに対する気持ちに気付いたあたりからである。つまり、イライザは年下であるにもかかわらず、兄の思春期的変化に気付き、先手を打ってデイジーをあてがうことで、キャンディへの思いを抱くニールを引き戻そうとしたのである。これは、聖ポール学院においてテリィとキャンディを引き離すための罠を仕掛けたのと同じで、策を実施する前に利用する者、策にはめる者両者をよく観察してから行動に移していることがわかる。イライザの策は巧妙に考えられているのである。成功するとは限らないが、策とはそういうものである。

兄妹愛の底に流れるもの

ニールとイライザの兄妹愛は、何に基づいているのだろうか。過去、家庭教師を38回も変えたことも含め、2人は共に戦う同志であったと考えられないだろうか。何に対して戦うのかという目的は明らかではないが、2人に近づいてきて何かをさせようとする者、もしくはしないように誘導する者全てへの戦い。キャンディもその意味で、最初は話相手として2人に送り込まれた敵だったのである。だから最初はキャンディだからというわけではなく、ニールとイライザの2人に対し送り込まれた者だから嫌がらせをしたのだろう。その後、キャンディのキャラもあり、兄妹とキャンディの関係がこじれていくが、最初はこのようなものだろう。

さらに底にあるのはコンプレックスと自由への憧れ

ニールとイライザは兄妹で、両親とも一緒に暮らしている。裕福で生活上の不自由はない。しかしニールとイライザは同志となって戦わざるを得なかった。何に対して戦っているのだろうか。

自由に対して

彼らは、当時としては何不自由ない暮らしをしていたはずである。しかし、身近にいるアンソニー、ステア、アーチーの自由さには及ばないと考えていたと思われる。それは当然で、親元を離れ、アンソニー達に非常に甘いエルロイ大おばさまの下、勝手気ままに暮らしている3人である。しかもラガン家は、教育に対して考えを持って子供達に接している。このため、結果的に放任主義となっているアンソニーらと比較した自由のなさを感じていたはずである。そこにさらなる自由人キャンディが入ってきたから、ニールとイライザのイライラは上がっていった。ただしキャンディは考え方が自由なだけで、登場時は衣食住全てにおいてニールとイライザより不自由である。

コンプレックスに対して

アンソニーらと比較した不自由さだけでなく、ニールとイライザは、アンソニー達それぞれにある何か1つのこだわり自分たちにないことがイライラの元となっただろう。
アンソニーはバラの品種改良、ステアは発明、アーチーは美貌とおしゃれ。このような打ち込めるこだわりが、アーチーとイライザには見られない。街にドレスを買いに行くシーンが度々あるが、何かに打ち込む、内面から自分を磨くのではなく、消費によって手っ取り早く飾ることで自らの輝きを得ようとしている。これは、普通の男子女子は大抵そうだと思えるから仕方のないことだけれど、周りにアンソニーをはじめとしてこだわりに生きる男子ばかりなので、ニールもイライザもコンプレックスを感じていたと思われる。そもそもアンソニーらは、ニールより年上と思われ、少年期の年の差による成長の差は大きいので、余計なコンプレックスを生んでいる可能性もある。加えて、自分たちには、アンソニーらがウイリアム大おじさまが自由に作らせてくれた門を作らせてもらえていないこともコンプレックスとなったであろう。これは同じアードレー一族であっても家格が異なったためか、親と暮らせないアンソニーらを不憫に思ったウイリアム大おじさまの配慮なのかは不明だが、ニールやイライザにとっては、そのような背景はどうでもよくて、門を作らせてもらえていないことそのものがコンプレックスの元となったはずである。
また、イライザについては、恋する男子がことごとくキャンディと重なり、かつ破れるという経験から、キャンディに対して憎悪とコンプレックスを抱いている。

兄弟愛の背景

以上、ニールとイライザの兄妹には、自由への欲求とコンプレックスという戦うべき目的があることから、互いに結びつき行動していたと考えられる。これがニールとイライザの兄弟愛の背景である。