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【北斗の拳】第6巻 アミバ(偽トキ)とは誰か②


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アミバは思い入れが強いので、2回に分けます。こちらは後半です。

第6巻 第6話 仮面の裏! の巻

ここで一転、トキ(=実はアミバ)が急に間抜けになる。
題名も「悲劇の再会!! の巻」、「悲劇の星の下に! の巻」といった「悲劇」シリーズから一転、「仮面の裏! の巻」なんていうなんか冷たいニュアンスをもったものになっている。
作者と編集者はついにトキの扱いを決めたのだ。この話の直前までトキをどういうキャラにするか悩んでいたが、トキを、倒してしまう一過性のキャラから、今後も残す重要キャラに変更した。
トキを敵としてあっさり倒してしまえば後腐れがないが、味方として生かすと決めたことで話が複雑になることは目に見えている。しかしおそらく編集者サイドはここで北斗の拳を超長期連載にすることを決めたのではないだろうか。アミバを倒せばケンシロウはそのままラオウにかかって行けば良いのにサウザ―を出したり五車星出したりしてちっともラオウと雌雄を決しない。 シンやジャギ、アミバに比べラオウを倒すまでが異様に長いのだ。
第02巻第2話 :シンを倒す
第05巻第9話 :ジャギを倒す
第06巻第8話 :アミバを倒す
第16巻第2話 :ラオウを倒す
この間隔の意味するところは何であろうか。 連載事情が絡んでいるとしか思えないが、残念ながらその正確なところはマンガ本体からは分からない。
いずれにしろ人気の様子見段階で出てきたシンはわりを食っている。 もともと1巻に収めようとして組み立てられたと思われるシンのエピソードなのでシンの登場シーンが少なすぎる。哀れなシン。
さて、話をトキのキャラ変更に戻すと、今から見れば、トキを生かすのは、ラオウもトキのことを気にかけているため、話に厚みが出るから、そのほうが良かったに決まっているのであるが、少年誌であることと週刊であることから、読者がその複雑な話の推移についてこれるかという悩みがあったのではないだろうか。この手の対決ものは次から次へと強敵が出てきて、それをばっさばっさとテンポ良く倒していくのが王道であるし、そもそもトキも伝承者候補であったのでその拳を封じられてしかるべき人間であるのに、生かすにはそれなりの理由が必要である。 この難題を解決したのが、「北斗神拳を医療に役立てること」と「トキ自身が病におかされている」という設定だ。これは微妙な設定だ。前者で「北斗神拳使用の論理的正当性」を、後者で「北斗神拳使用の感情的正当性」を持たせており、その2つがあって初めて、「なんでトキは拳を封じられなくても良いの?」に答えられると。なんと言っても「北斗神拳」の根幹である一子相伝の原則に対する例外を、しかも正しいこととして納得させねばならないのだから大変である。
それに、三段落ちじゃないけれど、倒すべき兄弟の数が3人と言うのは元々非常に良い数だったと思われる。 2は少ない感じがするし4は多い。丁度いいのが3というのは感覚的にも納得できよう。 そうすると、ジャギ、トキ、ラオウの3人を順番に倒して、ハイ「最終回」というのが少年読者が飽きずについてこれる数だろう。 まあ、その際、トキをケンシロウ側に引きこむ代わりにアミバが敵として身代わりに立ったということだ。かわいそうに。
話に戻ると、ここではいきなりケンシロウがアミバを好き勝手に撃つ。これで今までは手加減していたのだということが確定的になる。
また、ここでは、もっとおかしなことが起こる。 レイがアミバに対し「あまえは知らんのか 北斗神拳の奥義には秘孔封じというものがあるらしいぞ……」と言っている。あれ?アミばが知らないのは仕方がない。でも、レイ自身「第6巻 第1話 乱を呼ぶ星の巻」で言っていた「おれが調べた北斗神拳に関するすべてだ」の中にこんな細かい情報は無かった。それからの短い時間でよくレイは調べたものだ。 まあ、レイのために言っておくと、レイも拳を極めた男だからたとえ流派が違えども技の知識はあるので知っていた。レイが調べたといっていたのは北斗神拳のことではなく、ケンシロウが伝承者に決まるまでのいきさつのことであったのかもしれないし、そう考えても話は破綻しない。

第6巻 第9話 伝説をつくる男たち! の巻

これまたおかしなエピソード。 「トキ……本来ならかれが北斗神拳の伝承者になるべきはずの男だった…」と言っている。 本当か? 時系列がおかしくないか?トキの後継者が現実化しなかったのは、ケンシロウとユリアを助け自分が義性になったからで、 「本来ならかれが北斗神拳の伝承者になるべきはず」って決まっていたらケンシロウの拳が既に封じられていたであろう。 要は、「本来」とか「はず」なんて決まってたらケンシロウは「おまえはもう伝承者候補じゃない」のだよね。
ケンシロウとユリアをかばったために核から逃れられず体が弱ったことが原因ということだが、ではその後にリュウケンが伝承者を選んだと言うわけか? 話としてはトキの人柄をよく表していて良いけれど、釈然としない。 少なくとも私には、ケンシロウが後継者に指名された後にトキの悲劇があったように思える。 なぜなら、この悲劇のエピソード中でトキは「おれはこの先、人の命を助ける人間として生きる」と言っている。これは後継者から降りたということだろう。であれば拳を封じられただろうし、よしんばそれを免れたとて、リュウケンの道場から追放されたであろう。となると後継者がケンシロウに決まった際に、トキが道場らしきところでラオウと並んで黙して座っているなんて変。
また、このタイミングだと、ケンシロウは伝承者争いの際中にユリアとつきあっていたということになる。 余裕だな、ケンシロウ。 三男は鏡の前で一人ポーズを取る男だし、北斗神拳の伝承候補者は本当に変わり者ばかりだ。 …あ、伝承者争いに負けたら記憶を消されるとかだもんな、変わり者ばかりなのは、あたりまえか。まあ、お分かりの通り、実際は記憶消されないけどね。