宗方コーチは大人であるので、若い二人をなんとかして導こうとしているのが分かってつらい(まあ、そういうフリをして実はひろみを自分のものにしたいと画策している可能性も高いが)。また、お蝶夫人も藤堂もひろみサポートモードに無意識で入っていく前触れのようなエピソードが出てくる。まあ、お蝶夫人は前からだけれど。
お蝶夫人の思い
結局、この人はひろみに冷たくできない。全てを失ってでもひろみにベストなことなら飲んでしまいそう。なぜなのかは分からないが、模範解答的な想像をすると、同じテニスの才に恵まれた者として何か響くのだろう。それ故か14ページで少し謎かけのような発言をひろみにする。
コーチにもいえないことがおきたら
あたくしのところへいらっしゃい
当然ひろみは理解できず、
なんだろうコーチにもいえないことって…
いまのわたしにはコーチにかくすことなんてなんにもないけれどー
と考える。
お蝶夫人はひろみから離れた後、心の中で言う。
きっとよひろみ
もしふたりのあいだにはさまれてしまったら
ひとりでなやんできずつくまえに
あたくしのところへくるのよ
あたくしがいることをわすれないで…!
どんだけひろみのことが好きなんだよ、お蝶夫人。しかしこういうのは、才能ある者にしか分からない何かなのだろう。
藤堂の考え
藤堂は、海外選手との力の差について、184ページで次のように言う。
おなじ18歳でありながら いまたつ位置のなんというちがいだ
だが見ていたまえ その差はかならずうめてみせる
ひとりでうまるものならば おれがやる
ふたり必要なら おれたちが(略)
うもれたおれの背をふんで後輩たちが世界へかけのぼればそれでいい
そのときにこそおなじ18歳どうし こんな思いをすることもない
見ていたまえ
この差はかならずうめてみせる
この思い、この時点では不特定の"後輩たち"に対するものであるが、これがひろみへの思いへ転化するのも時間の問題というか、もとより藤堂はそう考えているはずと読む者すべてに思わせる。ニクイ演出である。
先輩たちの卒業
この第7巻で、藤堂、お蝶夫人を含む3年生が卒業する。その後も彼らはテニスを続けるし、本当にしつこく西高にやってくる。