Golden Time

時はお金で買えません

【エースをねらえ!】自滅する宝力さん


第8巻での話。

宝力さんが何故そのような道を歩まねばならないのかが分からない。

「エースをねらえ!」の登場人物の中に、努力のいらない、生まれながらの天才がいても良いのにと思う。

宝力さんの能力

結局、学年的にはひろみと同じ。お蝶夫人や蘭子とは1年違いでしかない。この中で、ひろみと宝力さんだけが、最終話を迎えても海外選手と渡り合ってテニス選手を続ける。この位置付けから、宝力さんはやはり天才である。お蝶夫人や蘭子では越えられない壁を越えているということ。その意味で、自滅する宝力さんを描いたことには意味がある。恋愛に溺れて自滅し、再度復活したから、世界で互角になれたという考えも可能ではある。なぜならば、お蝶夫人は自制しすぎの片想い。蘭子は義兄の宗方コーチに叶わない恋をしており、どちらも満たされた恋愛を経験していない。最終的にはお蝶夫人は、ずっと見守ってくれた尾崎に心を開くが、テニスの才能に活かすには、時すでに遅しである。その意味で、宝力さんは、テニスでは自滅したとはいえ恋愛に溺れることで一回り成長した、だから最終的にはテニスの能力も上がったと言えなくもない。しかしこの説は、少し話として面白みに欠ける。よって宝力さんの自滅には、他の意味があると考える。

物語の役割としての宝力キャラ

宝力さんの恋愛から自滅に至る話は、ひろみの恋愛を際立たせるためのものと考えると、スッキリする。

ひろみと藤堂の恋愛は、互いにテニスでそれなりの実力を持っていることもあり、テニス中心の生活の中の付き合いになっている。試合前等の互いのメンタルについても、自分も同じテニス選手だけに深く理解できる。

ひろみのライバル心

f:id:cure_researcher:20190714031939j:image

ひろみは、97ページで宝力さんを「彼女におとる青春はすごすまい!」とテニスの強力なライバルとみなしていた。ここで、「彼女におとる練習」「彼女におもるテニス」といったテニス絡みではなく、「彼女におとる青春」と抽象的すぎる表現であることがポイントである。宝力さんは、彼女なりの充実した青春を過ごしており、ひろみの考える「青春」イコール「テニス」という発想がないのである。だから、「青春」という抽象的枠の中では、宝力さんとひろみは比較のしようがないのである。

宝力さんの価値観

このようにひろみに言わせた上で、次のような伝聞を挟む。

f:id:cure_researcher:20190714033000j:image

ここで分かるのは、宝力さんの「青春」はテニスだけではないのである。高校時代の恋愛も、当然高校時代でしかできないもので、これを自制したら、体験しない青春よりおとる青春だと宝力さんは考えたのであろう。これを慢心、本気度が足りないと非難するのは違う。人生は一度きり、どこに価値観を置くかは本人が決めることである。現に、確かにひろみには先を行かれているが、最終巻を迎えた時点でも、現役として世界で戦える日本人の1人、というか、ひろみに次ぐ2番手に宝力さんはついている。1歳違いのお蝶夫人や蘭子が選手としては諦めつつある中、これはすごい才能と結果である。

つまり、この程度の代償は宝力さんは払ってもお釣りがくると考えなければならなかった。現にシングルス決勝まで来ているのだから。ひろみという特別な選手がいなければ、このままの状態でも優勝できたであろう。だから、それほど落ち込むことではない。読みを少しあやまっただけだ。

「エースをねらえ!」における役割

しかしストーリー上、宝力さんは落ち込む必要があった。それは「エースをねらえ!」という物語の主人公岡ひろみが悩み、自分の道を見つけるための他山の石という役割を負わさらていたからだ。

思考停止した岡ひろみ

f:id:cure_researcher:20190712042538j:image

もうダメですわ。ひろみの頭の中がテニスと藤堂の二択になってしまっている。恋もテニスも楽しみなよ。高校生なんだろ。しかもその解決を宗方コーチに求めようとしてしまう。これ、非常に精神的にマズい状態。自分で解決すべきことの答えを他者に求めている。描画もなかなかで、衣装を描かず、身につけているのは藤堂からもらったメダルのみ。いやあ、本当にマズい精神状態ですよひろみさん。しかしこれ、これを描くためだけに宝力さんは恋で自滅しなければならなかった。「エースをねらえ!」では、ひろみに関わる多くの者がひろみのために自らを犠牲にする。しかし唯一、宝力さんだけが自由に自分の好きなように振舞っていたようにみえたが、宝力さんは自らの意思でもなく、また、ひろみのためにという意識もなく、ひろみのテニスプレイヤーとしての資質向上の礎となっていたのだ。酷すぎるわ。