Golden Time

時はお金で買えません

【エースをねらえ!】お蝶夫人とは誰なのか


「エースをねらえ!」…岡ひろみが、本人のみでなく周りの誰も気づかなかった才能を宗方コーチが見出し、色々ありながらも世界に通用するテニスプレイヤーに育っていく話。これ、主人公は、ひろみでも宗方コーチでもなく、お蝶夫人だと言って信じてくれる人はどれだけいるのだろうか。

f:id:cure_researcher:20190716215128j:image

禅問答なセリフをおっしゃるお蝶夫人。スポーツのみならず文学的素養もあり、文武両道のお方である。しかし、だからこそ脳筋ひろみに敗れたとも言える。頭が良過ぎて第1巻から最終第18巻まで常に先読みばかりして、大人に翻弄されるイメージが強い。結構かわいそうなキャラである。

お蝶夫人視点の「エースをねらえ!」

お蝶夫人とひろみとの関係は、お蝶夫人視点では、次の様に進んでいく。
①愛玩物としてのひろみ②余裕のある鬼ごっこ③余裕のない鬼ごっこ④本気出す⑤焦り⑥認める⑦自分にケジメをつける
このような進行は、お蝶夫人には、かなりの葛藤、挫折があり、その一方で充足感があるという、複雑な感情と折り合いをつけてラストまで心がかき回されていることが分かる。ひろみが自分を越えたことを自分の身で確かめたいために、ひろみとの対戦前に猛特訓し、その結果、肉離れを起こし入院するという悔しいであろう事態にも、サバサバし、見舞いに来た尾崎に対し、「海が支えでした」と語るのは、肩の荷が下りたという感情が近いのかもしれない。ひろみの前を走らなければ、ひろみのために尽くさなければという義務感というのか。それを考えなくとも良くなった、つまり、ひろみは独り立ちしたと認めたと。そう考えると、この「海が支えでした」発言は、桂コーチの飲酒解禁と同じ意味を持つ。
段階を追って見ていく。

愛玩物としてのひろみ

直接的描写はないが、ひろみのテニス部入部にお蝶夫人が関わっているようである。ただし、お蝶夫人がひろみに直接入るよう勧めたのか、ひろみが憧れたということなのかは分からない。いずれにせよ、1巻で物語が始まった段階で既にひろみは、お蝶夫人のタオル持ちの役を得ており、お蝶夫人のお気に入りの地位を得ていたようである。身の回りの世話をする者は他にもいる。ただ、彼女らにお蝶夫人がどのような感情を持っているのかは、描写がないので分からない。この段階は、お蝶夫人は、ひろみが自分を追い抜くものになるどころか、西校で選手の座を得るということさえ想像していないのではないだろうか。実際は1年生で選ばれるのであるが。

余裕のある鬼ごっこ

宗方コーチの特訓を経て、ひろみが西校テニス部の選手として、誰も何もいえなくなった時期。しかし、お蝶夫人は、余裕である。他の西校の選手同様、自分を脅かすことはないと考えている。

余裕のない鬼ごっこ

真剣にライバルと見なしつつある段階。それでもまだ自分は追いつかれないと信じている。

本気出す

倒すためには本気で挑む段階。るただし、プライベートではひろみのことが本当に好きで、突き放せず、精神的にも強くなりつつあるひろみを挫くことができなくなる。

焦り

ひろみが完全に自分にとって競い合わねばならないライバルとなったことを認識しなければならなくなっている。

認める

既にひろみは自分より高いところに行っていることを認め、自分は、プレイヤーであるとともにひろみのサポートを行うことが、自分の役目だと確信する。

自分にケジメをつける

ここがお蝶夫人の恐ろしいところで、自分のプレイヤーとしての限界を知るために、自分の最高の状態でひろみと試合をして、それでも負けることを確認したいと考え猛特訓する。その途中でお蝶夫人は肉離れを起こしてしまい、残念ながらその考えは達せられない。しかし、自分が、ひろみよりプレイヤーとしては下だということをわざわざ確認しようとするその考えは、高みにいる者にしか思いつかないものだろう。これは、作中、お蝶夫人だけでなく、蘭子も同じ境地に達している。

お蝶夫人が本当に望んだこと

これは純粋に想像なのだが、お蝶夫人は、ひろみに対して望んだことは、日本のテニス界のためにひろみが世界で活躍することと、現在の自分のテニスは、体調・技術を完全に仕上げ、全力で向かっても、ひろみには歯が立たないことを身をもって知ることと、そのような状況でも、ひろみとの試合でエースをねらい、取ること…であったのではないかと。