短編3話からなる物語。
一貫して描かれるのは、人生の節目である「卒業」に翻弄される男女。
この3話を通じて遠野貴樹という1人の男が登場するが、3話それぞれで卒業がキーワードになっている。
各話における卒業
第一話 桜花抄
小学校卒業と同時に離れ離れになってしまった男子女子2人が主役の物語。別れた後から始まる物語。
第二話 コスモナウト
中学で好きになった男子を追い卒業後も同じ高校に通う女子が高校卒業後の進路について考えられない主人公の物語。別れが来ることが考えられない今現在の物語。
第三話 秒速5センチメートル
この第三話のタイトルが映画全体のタイトルでもある。会社を退社(=卒業)し自営のプログラマになった男の物語。
卒業の意味
第一話の卒業の意味
卒業と同時に親の転勤で遠くへ引っ越すという、自分たちではどうしようもないものの象徴として描かれる。厳密には親の転勤がたまたま卒業のタイミングと重なっただけであるが、小学校を卒業し、中学生活が始まるというタイミングでの転機そして、最後に会った日という意味で卒業が象徴となっている。
第二話の卒業の意味
卒業は進路選択という形で描かれる。中学から高校へは、親元から通う点で変わらず、自分の意思と頑張りで進路を決めることができる。しかし、高校からその先は、自分だけでは決められない。特に好きな相手が東京の大学は行くと言っているから自分も進路は東京の大学とするとは言えるものではない。そんな中で、刻々と近づく卒業を意識しながら過ごす高校生活が切り取られる。
第三話の卒業の意味
明示的形式的には退職という形で卒業的なことが描かれている。しかし他にも、三年付き合ってきた彼女との別れ、更に、第一話から引きずってきた何かからの卒業が描かれている。
全体を通じた卒業
最後の最後に主人公遠野貴樹が微妙な笑みを浮かべる。この笑みの解釈で、ハッピーエンドかバッドエンドか評価が分かれるが、いずれにせよ、遠野が小学校卒業から引きずっていた何かに対して「卒業」できたものと思われる(願望)。