Golden Time

時はお金で買えません

【秒速5センチメートル】変わるということ変わらないということ


「秒速5センチメートル」において、「変わる」ということと「変わらない」ということはどのような意味を持つのだろうか。

変わる明里

明里は第一話と第三話で登場する。明里は第一話では、貴樹に依存しているように見えるのだが、明里と貴樹との関係において、アプローチは必ず明里から行われている。唯一貴樹からなのは、最初の、明里がクラスメイトにからかわれているところを貴樹が救った場面。ここで、明里は貴樹に頼ることを覚えた。しかし、明里の感覚は恋愛というより、同志的な感覚である。貴樹が自身の転校が決まった際に、わざわざ栃木の明里のところに来るきっかけとなったと思われる明里の発言は、次のものである。

いざという時に電車に乗って会いに行けるような距離では無くなってしまうのはやっぱり少しちょっと寂しいです

これは、恋愛感情とは言えない。やはり頼る感覚、同志の感覚である。そして明里は、貴樹の代わりに頼れる人ができれば、もう明里のいう「いざという時」に貴樹に会いたいという気持ちはなくなる。もしくは、栃木と鹿児島という絶対的距離が、貴樹に頼れないことになるので、明里は自立していったと考えられる。そして、高校時代も、成人後も、貴樹以外の男といるカットが挿入されている。明里は頼る相手は、いざという時に会える人という条件があり、その条件を満たす人が時々にいたということで、貴樹はその内の、小学校高学年と中学校の初期の相手だったということである。

変わらない貴樹

第三話、社会人になり、3年間付き合った女性のメールには、次のように書かれていた。

あなたのことは今でも好きです。

でも私たちはきっと
1000もメールをやりとりして、
たぶん心は1センチくらいしか近づけませんでした。

これは、貴樹が明里と別れてからほとんど変わっていないことを意味している。

ここで、明里が言った「秒速5センチメートル」と成人後付き合った女性がメールした3年間で1センチ程度、つまり年速0.3センチメートルとの対比を見ることができる。これ、1億分の1センチメートルである。なお、第2話では花苗が、ロケット運搬を見て、

時速5キロなんだって

と言っている。ここで貴樹はハッとした顔をする。これは秒速1.4センチメートルである。

つまり、貴樹に関わる女性が発言した速度を秒速に変換すると以下となる。

登場話 名前 秒速
明里 5センチメートル
花苗 1.4センチメートル
元恋人 1億分の1センチメートル

明里の圧勝である。明里の3.5分の1まで肉薄した花苗さえも全く太刀打ちできないのであるから、名前もクレジットされない元恋人では貴樹の心に近づくことは無理なのである。

声優の同一性・非同一性

貴樹のCVは、第一、二、三話通じて同じ水橋研二氏が担当している。一方、明里のCVは、第一話は近藤好美氏が、第三話は尾上綾華氏が担当している。これも結局、明里が変わってしまったということの表現である。実際に声優が別人に変わっているのであるから、これ以上の表現はない。
あくまで貴樹は変わることができず、明里は変わり続けるのである。