Golden Time

時はお金で買えません

【秒速5センチメートル】意図的分断描写について


「第二話 コスモナウト」において、花苗が告白しようとしてできなかった直後、ロケットの打ち上げが始まる。縦に飛ぶロケット反射によって生ずる縦に一筋伸びる雲が、画面左右の一方を明るく、もう一方を暗く分ける。

ロケット雲の明暗が意味するもの

この明暗の分離がは、2人の心が離れていることを暗示している。しかし、そもそも実際にロケットの雲が周りを明暗に分けることはない。なぜなら、ロケットから発せられる雲は、線であり面でないため、影ができることはないからである。しかしこの場面で明暗が描かれた。
貴樹の部活は屋根のある陽の光の陰となるところで行う弓道である。花苗の部活は青い空の下で行うサーフィンである。

影に眠る花苗

「第二話 コスモナウト」のラストで明里が眠るシーンでは、花苗が光を避け、影の部分で眠っている。これは、影が貴樹を表し、花苗が貴樹の胸で眠りたいという想いを暗示しているといえる。
また、花苗の足に少しだけ光が当たっているのも象徴的である。これは、花苗は明かり(=明里)を無意識に避けているように取れる。もしくは、明里の存在に気付きながら、貴樹に明里のことを踏み込んで聞けないことを暗示しているようにも取れる。また、窓枠の影が十字になっている。これは花苗が十字架を背負っているという暗示か。もしくは舞台が鹿児島で十字といえば、島津家の家紋である。これが何かを意味していないだろうか。

桜花抄の明暗

そもそも「第一話 桜花抄」において、貴樹が明里に会いに行き、翌朝駅で見送られる際、白い雲と黒い雲が描かれている。電車が動き始めた後、白い雲が右に動くが黒い雲は動かず、だんだん離れて行く描写がある。ここでは、貴樹が電車で離れて行くので、物理的には貴樹が白い雲と考えるべきであるが、明里は変わって行くが、貴樹は変わらないことを暗示していると考えれば、貴樹は黒い雲になる。これのどちらなのかについては、別れの時の明里の最後のセリフが意味を持つ。

貴樹くんはきっとこの先も大丈夫だと思う

これは、上から目線というか、まず前提として明里自身は大丈夫だということを意味しているのなはないか。何が大丈夫なのかというと、転校の不安について。明里は1年前に転校を経験している。それを踏まえて、自分は転校のショックから立ち直ったことを踏まえて、大丈夫と言った。当時、明里は貴樹への気持ちを転校の不安と同質化していたのではないか。そして、明里はもうそれを消化してしまっているので、別れ際に上のようなセリフを言ったと。そもそも貴樹と明里は、ともに転勤族の子で転校には慣れている。ただし、これまでの転校と異なり、一年前の明里の転校は、同志として過ごしてきた貴樹との別れを意味した。これが互いに大きなショックを残した。そして、今、貴樹が、今度は何かあってもすぐ会えないほど遠い鹿児島への転校となった。それでも貴樹なら大丈夫と明里は思ったということ。この考えを補足するのは、駅で再会した後、明里は一切、今後手紙を出す、電話するとは言っていない。貴樹は、しつこくそれを言っているにも関わらず。また、それまでは電話も手紙も明里主導で進んでいたにも関わらず。これは、明里は既に貴樹との関係から、卒業できていたことを暗示している可能性がある。

明里は離れた、では貴樹は?

いずれにせよ、貴樹と明里も少なくとも物理的には離れていき、物語の途中で明里は精神的にも離れていった。ただし、貴樹についてはラスト直前までは離れられていないようで、踏切シーン後、離れられた可能性があるラストであった。