Golden Time

時はお金で買えませんが、時間はお金で買えちゃいます。

【秒速5センチメートル】マンガ版の価値について


「秒速5センチメートル」には、小説版とともにマンガ版(原作 新海 誠、漫画 清家 雪子)もある。小説版よりは映画版寄りの展開である。

キャラクターデザイン

映画版とは異なる。ただし、映画版はそもそも背景の精細な描写対比、人物の描写がのっぺりしていて表情に乏しい点が特徴であるので、それに比べると表情から感情を読み取ることができるキャラクターデザインとなっている。ただし、話がそもそも全体的に暗いトーンであることと、とくに明里の表現が顕著であるが、嬉しいはずのシーンでもどこか憂いを含んだ表情で描かれているため読んでいて重い印象である。その意味で、映画版の、のっぺりした顔の表現は、暗くなりすぎないための適切な表現であるとも言える。

多くの種明かし

小説版と同様マンガ版も映画版で端折られた部分の種明かしがある。例えば高校で花苗と貴樹が一緒に帰る関係になった理由も描かれている。あと、別れてからの明里の想いも。その意味で、映画版の後に読む方が良い。マンガ版を先に読むと、映画版が単にマンガ版のダイジェスト版としてしか見られなくなるであろうから。小説版も同様。小説版とマンガ版では、マンガ版の方がエピソードが深く描かれており、かつ映画版でも小説版でも描かれていない将来に関することも描かれているので、映画版、小説版、マンガ版と読むのが一番良いと思われる。種明かしの部分が異なっており、その意味で映画版、小説版、マンガ版全てを読むとこの「秒速5センチメートル」が、よく分かる。よく分かるのではあるが、それは新海監督の考える「秒速5センチメートル」の中身が詳細化されるのであって、映画版自身が持つ意味とはまた異なる。この辺りは、難しい話である。

漫画担当の清家雪子氏

その後「まじめな時間」を描かれた方。「まじめな時間」と「秒速5センチメートル」のトーンは似ている。
「秒速5センチメートル」では、小・中学生を描くのが難しいのか最初の内はあまりこなれた感じがしないが、成人後の描画は非常に魅力的な印象である。あくまで個人的な感想になるが。
「まじめな時間」では、この「秒速5センチメートル」の後半の描画を更に洗練させた感じの絵となっている(子供も出てくるが、「秒速5センチメートル」より魅力的に描かれている印象)。

表紙

秒速5センチメートル(1) (アフタヌーンコミックス)秒速5センチメートル(2) (アフタヌーンコミックス)

表紙の貴樹と明里の顔が…もう少し魅力的に描けていたら…と残念でならない。特に明里。何か怖い。明里にこのような印象を受ける面はないと思うが。しかし繰り返すが、成人後のキャラクター描画は良い。特に女性3人の表情は全て魅力的。だからこそ表紙が残念。