北斗兄弟の三男ジャギという男。普通に考えれば、この時代にしては非常にラッキーな人生を歩めたはずなのに、弟に負けたということのみにこだわったために人生を終えることになる。リスク管理というより損得勘定がまるでダメな人であった。
なぜラッキーなのか
そとそも、歴代の北斗神拳伝承者争いに敗れた者は、拳を封じられ、記憶を消される描写がある。それを、ラオウが先代リュウケンを倒すという無茶苦茶な行動を起こしたために免れることができた。これだけでもラッキーではないか…と言いたいけれど、実はリュウケンと伝承者争いをしたコウリュウは、老いたる身でラオウに戦いを挑んでおり、伝承者争いに敗れた者は…云々は信用できない情報だとわかる。とにかく、時代が時代だけに生き延びられただけでラッキーである。そこですんなりシンやユダのように一国一城を構えて穏やかに過ごせば良いのに、わざわざケンシロウの真似をするなど意味がわからない。胸に傷をつけるのは痛かっただろうに…まあ、見れば分かるが、ケンシロウの真似の傷は真円に近い穴が空いており、シンの無慈悲さが出ているが、ジャギのそれはためらいながら自身で突いたようで、それぞれの傷の出来は良くない。
さらに、ラオウ、トキ、ケンシロウと共に拳を磨くというチャンスを得ていることがどれだけラッキーなことか。この時代のベストである剣の達人と鍛錬したのであれば、伝承者となれなくとも拳を封じられなければ、この時代のその後の人生をかなり安心して過ごすことができよう。
そして、ラオウらと鍛錬することができるほどには拳の才能があったということだから。何とラッキーなのだジャギは。
なぜケンシロウの真似をしていたのか
自分より劣るはずの弟の真似をすることに何の意味があるのか。ジャギの思想としておかしいのではないか…と思える。しかしそれは簡単な理由で説明がつく。世間では、胸に7つの傷を持つ男が北斗神拳伝承者ということになっている。だから胸に傷がなければ、それは伝承者ではないことになる。故にジャギは胸に傷をつけてケンシロウの真似をしなければならなかったのだ。かなりおかしな話であるが。
得ようとしたもの、失ったもの
ケンシロウの名前を騙りながらも、ジャギはかなり自由に人生を謳歌していたように見える。この人生を、ケンシロウへの恨みで失ったのは人生の収支としてはかなりマイナスである。ラオウのように特に野望もないようなので、おもしろおかしく生きればよかったのではないだろうか。ジャギにはその程度ならできる拳の才能はあった。結局ケンシロウにおイタが見つかり命を失うことになる。弟コンプレックスの代償として失ったものは大きい。
俺の名を言ってみろ!
ジャギさんでしょ?