アミバは「自称天才」扱いされて、どちらかというと笑われる対象として描かれている。現にレイは嘲笑気味にアミバに語りかけている。しかしアミバはやはり天才である。拳法の天才度でいえば、恐らく北斗の拳の中で最上位の天才である。これについて見ていく。
天才とは?
まず天より与えられた才能がなければならない。その点、アミバは、北斗神拳伝承者に一緒に鍛錬した兄と間違えるほどの北斗神拳を使う。これがどれほど凄いことか。ケンシロウはこれも一緒に鍛錬した伝承者候補の兄ジャギに対して、その拳においては全く手こずっていない。一方のアミバは、北斗神拳伝承者に北斗神拳で追い込むことの意味を考えると、アミバの天に与えられた才能が分かる。
天才の天才たるゆえん
アミバには天から与えられた才能があるのは分かった。しかしそれだけでは天才とは言えない。ケンシロウと互角に戦ったとして、それは超えたことにはならない。単なる1拳法の伝承者に、その拳法で互角に戦ったところで、そんな者は数多いる。アミバが何故ケンシロウに北斗神拳で互角に戦えたかを考えなければそれは分からない。
アミバと北斗神拳伝承者の違い
アミバは、新しい秘孔探しをしていた。これはケンシロウを始め北斗神拳伝承者争いをした者の誰も行なっていないことである。アミバは、北斗神拳を自らの拳法の体系の1つとして極め、さらに改善しようとしていた。これは伝承者争いをしていた者たちには想像できないことなのである。彼らは伝承することが主であり、ケンシロウが至った無想転生にしても、北斗神拳の体系にすでにあるものなのである。しかしアミバは違う。新秘孔を探すという自らの道を進んでいるのである。北斗神拳に対するスタンスが既に天才アミバは違うのである。何故この差が出るのか。
努力と探究心との違い
ラオウにしてもケンシロウにしても、北斗神拳を身につけるのに鍛錬している。しかしおそらくアミバは、その習得にほとんど時間を費やしていないであろう。天才なので見聞きすれば大体分かるのである。そして天才なのでさらに先が知りたくなる。つまり、ケンシロウ等は北斗神拳習得に努力をしているのに対し、アミバは探究心をもって楽しく学んでいるのである。この差は大きい。
拳を使う目的が絶対的に異なる
さて、努力と探究心という違いが、アミバとケンシロウ等を分ける差であることは述べたが、これにつながる根源的な違いが両者にはある。それが、拳を習得する目的だ。ケンシロウにしろラオウにしろ、北斗神拳伝承者となることを目的として拳を磨いてきた。では、伝承者になったらどうするのか?それについては、ケンシロウしか分からないが、拳を潰されることなく生き延びたラオウ、トキ、ジャギを見ると、北斗神拳を身につけた後の行動は、大体のことはわかる。
ケンシロウの目的
ケンシロウは、気まぐれに、それなりの秩序が保たれた小国を破壊して回り、基本後は放置である。まあ、シンの治めたサザンクロスのある関東一円の住民にしろ、サスザーの雇用促進大事業である聖帝十字陵建設に関わった子供達にせよ、ケンシロウが絶対的事業主を倒し、その後放置したため、全くの無秩序状態となり、悲惨な末路となったであろう。ケンシロウは、単にユリアと一緒にいたいだけの人だから、北斗神拳はラオウやシンからユリアを奪うことと、楽しみとしての殺人以外の使用目的はない。最悪の伝承者である。
ラオウの目的
こいつは、支配欲。これで伝承者争いから脱落してるくらい欲の塊。国の支配だけでなくユリアの支配も。全くどいつもこいつもロクなことに北斗神拳を使わない。そもそも北斗神拳は暗殺拳なのだから、支配に使うのはおかしいだろ。
トキの目的
元々の目的は不明。体調を崩してからは医療に使用しているが、まあ、野望も消えただろうから、元々の目的は推測できない。
ジャギの目的
目的どうこうより弟に伝承者争いに敗れた復讐心から自暴自棄になっている。しかしちゃっかりそれに北斗神拳を使っている。
そしてアミバの目的
アミバは強くなるためではなく、拳を理解することそのものを目的としている。故に北斗神拳「も」極め、更に先に行くために新秘孔の研究もする。これを恐らく他の拳法についても行なっているであろう。つまりアミバ流なのは北斗神拳だけでなく、他の拳法にも有るであろう。これは、アミバが拳を理解することを目的としていたからこそ成し得ることなのである。
決定的な天才のゆえん
北斗神拳は、アミバにとって数多ある習得した拳の1つに過ぎないのである。これはもう驚異的なことなのである。
天才の弱点
天才の逸話では1つ分野に優れていても他が全くダメなことが語られることが多い。これがアミバにも当てはまる。アミバ…精神的にまるでダメ。ケンシロウとの戦いも、昔を知るレイが登場してから動揺してしまい敗れる。アミバという天才が、ケンシロウという1人の利己主義者により倒されたのは、北斗神拳の進化のみでなく、拳の世界全体ににおいても、本当に悔やまれる。