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【オリビア・ニュートン・ジョン】「そよ風の誘惑」の日本語タイトルの奇跡


オリビア・ニュートン・ジョンのヒット曲「そよ風の誘惑」は、初夏の草原の爽やかさを彷彿とさせるメロディに、オリビアの清楚な中にも力強さの宿る歌声が相乗効果となった名曲であるが、その日本語版タイトルもまた、絶妙なのである。

日本語版タイトル

先に挙げた、メロディの爽やかさと歌声の清楚さ力強さを余すところなく伝える「そよ風の誘惑」というタイトルは天才的である。しかし、このタイトルは、もう1つの大切なことを意図的に伝えていない。
それは、この曲がインストゥルメンタルではなく歌であることである。この曲には、歌詞がある。しかしこの邦題には、歌詞の内容に対する情報は完全に落ちているのである。

原題

「Have You Never Been Mellow」

これは、「mellowになったことないの?」ということで、mellowの意味が重要になるのだが、この場合のmellowは、経験を積んで落ち着いたという感じの意味で使われている。この曲の原題は、「落ち着いたことはないの?」、つまり「まあ、落ち着け」という意味である。誰かが誰かを諭している言葉なのである。

爽やかさと力強さの正体

この曲のタイトルが、相手を諭す内容でありながら、爽やかさと力強さを併せ持つ理由はその歌詞にある。歌詞の中で、具体的な例を挙げて「I was like you」(自分もそうだった)と繰り返し言っている。落ち着きなさいと諭す際も、相手に寄り添っているのである。これは、母の優しさである。具体的なシチュエーションが描かれているわけではないので、母と子なのか、祖母と子なのか、上司と部下なのかは分からない。しかし母性を感じさせる歌詞なのである。これが原題のタイトルとメロディと歌声の関係なのである。

あらためて邦題を見てみる

「そよ風の誘惑」である。「そよ風」はまあ良いとして、「誘惑」というのは、悪魔の囁き的な響きを持つ。これはどう解釈しても母性とは繋がらない。しかし日本でこの曲を売るには、「まあ落ち着け」的な邦題ではダメだという判断も分かる。日本人なので英語が分かる人も少ないだろう、せいぜい原題と意味の整合性が取れれば良い程度で考えれば、mellowには、豊かな、芳醇なというニュアンスもあるので、それに対しては「誘惑」という言葉を置くのは、まあ、ギリギリ許容範囲かもしれない。

奇跡の邦題

それでもやはり原題と邦題の意味の差は大きい。結局、「そよ風の誘惑」という邦題は、メロディと歌声から得られるイメージを巧みに表現し、英語の歌詞が分からない日本人にも邦題を聞いただけで、オリビアの声とメロディがイメージできるものになっているのである。
その意味でこの邦題は奇跡である。

英国で叙勲

オリビア・ニュートン・ジョンが、英国のデイム(男性のナイト=勲爵士=に相当)の称号を授けられたというニュース。

this.kiji.is

オリビアは「そよ風の誘惑」のみならず多くのヒット曲を発表したが、やはり日本では「そよ風の誘惑」が最も有名であろう。しかしこの曲が「静の中にある力強さ」を感じられれば、「動一本」で攻めてくる「フィジカル」も捨てがたくオリビアらしい一曲であると理解できる。