"Like a Virgin"と言えば、マドンナを世界的なスターにした今日である。この曲をヘヴィメタル/ハードロックのスターバンドモトリークルーがカバーしている。ただし、モトリークルーは、歌詞をほんの少しだけ変えることで、自分たちに合わせた曲にすることを試みている。
youtube(オフィシャル)
モトリークルー版。別の曲と思えるほどイントロが全く違うため、マドンナ版を知っていてモトリークルー版を初めて聴いたならば、同タイトル別曲かと思えるほどである。
こちははマドンナのオリジナル版。
【共にアーティストのyoutubeオフィシャルアカウントの動画のリンク】
モトリークルー版とオリジナルのマドンナ版の違い
違いその1
マドンナ版:Gonna give you all my love, boy
モトリークルー版:Gonna give you all my love, girl
これは簡単である。マドンナは女性であり、モトリークルーのボーカルであるヴィンス・ニールは男性であるので、異性が逆になるからである。つまり、モトリークルー版は、男性の処女性について歌っていることになる。モトリーがそれを演奏するかということはあるが、歌詞の改変からはそのように受け取れる。
違いその2
オリジナル版のヴァース1において、
But you made me feel
Yeah, you made me feel shiny and new
となっている部分が、
Oh, your love thawed out
Yeah, your love thawed out what was scared and cold
となっている。ただし、この部分、モトリークルーのオリジナルの歌詞かというとそうでもなくて、マドンナ版のヴァース2に使われている歌詞。そして、モトリークルー版のヴァース2のこの部分はどうかというと、つまり、マドンナ版では、ヴァース1と2で使い分けられている歌詞が、モトリークルー版では同じになっている。これが、意図したものかそうでないかはうかがい知れないが、意図しているとして解釈してみる。それぞれを訳してみると、以下となる。
【マドンナ版】
But you made me feel
Yeah, you made me feel shiny and new(あなたは私を、輝かしく新しい気分にさせてくれる)
【モトリークルー版】
Oh, your love thawed out
Yeah, your love thawed out what was scared and cold(あなたの愛は怯えて冷たい私の気持ちを溶かしてくれる)
まあ、どちらもあまり意味は変わらない。日本語で端的に言えば、どちらも「癒してくれる」で済みそうである。ただし、イメージ的には、マドンナ版は、ゼロからプラスに癒す感じで、モトリークルー版は、マイナスからゼロに癒す感じがする。結局、マドンナ版もヴァース2でモトリークルー版の歌詞になるので、同じと言えば同じであるが、モトリークルー版は、ヴァース1も2もマイナスからゼロなのである。これにより、モトリークルー版の方が厳しい環境に主人公が置かれていると強調されていると言えるかもしれない。かの違いにはしかし、元々女性の歌詞を男性ボーカルが歌ったから変えたというものではなさそうである。
それよりも、モトリークルー版の歌詞がヴァース1も2も同じなのは、ヴィンスが歌詞を間違えたとか、覚えるのが面倒臭かったからとかの方が、モトリーっぽくて良いのだが。
同世代性
モトリークルーのメインソングライターであるニッキー・シックスは、1957年生まれで、マドンナと同じである。この曲のカバーの選曲は、この同世代性から来ているということもあるだろう。同じくモトリー・クルーが「アナーキー・イン・ザ・UK」をカバーしているセックス・ピストルズのボーカルジョンライドンは1956年生まれであり1年上であるが、ベースのシド・ヴィシャスが1957年生まれであり、同じ年生まれとなる。ニッキーとシドが同い年。少し意外である。
やはりイントロの違いは気になる
なぜこのように変えたのか分からない。慣れると良いが、マドンナ版をよく知っているだけに、慣れないと、個人的には非常に違和感のあるイントロである。