突然の異動を嘆く九重に、陣馬は、上から組織を変えて行けというアドバイスで九重を送り出そうとする。これは組織の人間として正しい意見なのだろう。しかし、この九重の異動には、一人の人間にとっての非常に大きな問題が残されるのである。
第四機動捜査隊における九重の成長
ここでの九重の一番の成長は、偽通報事件において取り逃がした成川が悪の道に染まりかけていたところを、すんでのところで救ったこと。これは、九重の今後の容疑者に対する考えにおいて大きな意味を持つ経験だったと思われる。これを糧に、九重は出世の階段を登っていくのか…、とちょっと待ってほしい。
もう一人の若者の成長も考えてみて
九重は、第四機動捜査隊で良い経験を積み、エリート街道に乗るのかもしれないが、人生に落ちこぼれかけている成川のことも考える必要があるだろう。成川は、エトリに殺されかけ、久住に騙され、ボロボロになったところに、九重に「全部聞く」と言われて救われた感じがしたに違いない。その九重が全部聞かないまま任を離れると知ったら成川はどう思うか。
「全部聞く」と言ったじゃないか!
こう思うに違いない。そうなると、すでに逮捕されている身なので、他に慰めてもらえる人を探す自由もなく成川は九重を恨むだろう。これ、既視感ないか?
蒲郡元刑事と救わなかった方の青年
この、九重と成川の関係は、蒲郡元刑事が救わなかった青年の関係に似ている。どちらも、容疑者の側は、刑事の優しさを信じていたのに裏切られたと感じる。成川の場合は、九重から「全部聞く」と言われながら、全部聞く前に九重本人は移動していなくなってしまう。救わなかった青年の方は、初犯時に親身になってくれた蒲郡が、再犯時には、もう退職したことと疲れたことを理由に助けてくれなかった。どちらも、両刑事側の環境が変わったことが理由で、自分が救われなかったと恨むのは、逆恨みではあるが、理解できなくはない。つまり、九重は、第2の蒲郡元刑事になる可能性があるのだ。
成川が九重を恨むこと
これがどういう意味になるのかを考えると、少し恐ろしい。しかし、わざわざ蒲郡元刑事のエピソードがあり、成川を似た境遇に投じている以上、成川が逆恨みする環境は整ってしまった。これ、最終回で扱えるものなのだろうか。
九重を第四機捜に残留させるための異動
成川が第10話で全く登場せず、九重の異動だけが進む。これは、最終話で九重と成川の関係を描く布石に見える…が、久住との決着もあるのにそこまでできるのかという気もするが。
ただ、今後のシリーズ化にあたって、九重を第四機捜に定着させるため、敢えて一旦異動というアクションをかましたのではないかとも考えられる。つまり、九重が異動する、成川は九重以外は話さないと言う、ここで云々カンヌンあって、九重が一時戻り、成川を聴取、またここで云々カンヌンあって、刑事局長の九重の父親が、九重を第四機捜に戻す判断をする…みたいな感じで進む気がする。
MIU404だから
これが他のドラマなら、あまり気にすることではないだろうが、MIU404である。九重の中に蒲郡の影を落とす脚本は十分考えられる。そうなると、あと1回最終回を残すのみのMIU404でこれを扱うのか?それには時間が足りなさすぎるだろ。