最悪の最終回の始まりである。予想した最悪のパターン。
- 命・身体の危機を盛り上げに使う安易さ
- 久住が志摩と伊吹を結果的に殺さなかったこと
- ストーリー上の対比
- 人を信じるということ
- 屋形船での逃走
- オリンピックに対する皮肉
- デジタル犯罪の無罪を証明したアナログ器械
- RECさん志摩さんに説教される
- ナウチューブアカウントをバンされていたRECさん
- 久住の似顔絵
- 志摩の伊吹評と頭の良い九重
- 久住最後の言葉
- いぬのおまわりさん
- トラッシュ
- 5円玉の分岐
- アナザーワールド
- ハムちゃんファミレスで食事
- スパイダー班 糸巻さん
命・身体の危機を盛り上げに使う安易さ
恐れていたけれど、話の盛り上げに命が助かるか否かを使ってきた。しかも職場で愛され、暖かい家族がいる陣馬刑事を重体にさせるなんて。少なくともこのドラマではネタとして感動の無駄な消費はいらない。こんなの使わなくてもMIU404の最終回は盛り上がっただろうに。
しかも、最初に家族出しただけで、家族愛の感動も別に描くつもりもないし。陣馬さん昏酔状態が生かされたのは、不謹慎ながら、陣馬さん目覚める→九重メールする→伊吹携帯バイブで落下→伊吹目覚める→伊吹、志摩を蹴飛ばす→志摩目覚める の、人間ピタゴラスイッチのシーンだけである。負傷しても、せめて入院程度で、見舞いに来た伊吹、志摩にハッパかける展開の方がいやらしくなかったと思う。
久住が志摩と伊吹を結果的に殺さなかったこと
志摩も伊吹も縛り上げていたのだから、久住は2人を殺すチャンスはあった。しかし殺していない。ただ、殺す気がないのではなく、沖に出て2人を海に投げようとはしていた。この違い。悩まず楽しく生きるという久住のポリシーからは、銃やナイフで殺すことは、その後、死体を片付けなければならないわけで、それは楽しいものでないため、嫌ったのだろう。海に捨てれば、その問題はない。この判断が命取りだったと。
まあでもこれ、昔からある、悪役は殺すチャンスが何度あっても殺さず、正義のヒーローはたった1度のチャンスを逃さず倒すという文脈のものだから仕方ないけれど。
ストーリー上の対比
まあ、ストーリー上の対比はある。伊吹が師匠と仰ぐ蒲郡さんの事件。妻が殺されたため復讐した蒲郡の言葉「刑事だった自分を捨てても 俺は許さない」という言葉が頭から離れない伊吹。しかも伊吹の面会を拒否した際、面会受付の刑務官に「時々いるんです ああいう…覚悟を決めた人」と言われる。これがこのあと効いてくる。
故意に自動車を使って(既遂未遂は問はず)殺人を行なった犯人に対しては、蒲郡の立場は九重の立場に当たる。しかしなぜか、
それでも陣馬さんをああしたのは久住だ
刑事を捨てても 俺は許さない
と、蒲郡の言葉を使って、伊吹が復讐を誓っている。少し狂気入ってるような表情で。師匠のように覚悟を決めた人になったのか微妙な表情であるが、ここは九重が怒るところではないだろうか。なんとなく人の立場がおかしくなっているが、蒲郡は伊吹の師匠だからという解釈も、まあできるだろう。
人を信じるということ
久住はこれまで他人を信じることをしてこなかった。エトリにしろ成川にしろ、不要と判断したら直ぐに切っていた。信じられるのは自分だけということ。これは、自分が安全な場所にいてこそできること。
最後の逃走の際、久住は、屋形船を使った。そこに久住が声をかければ集まる人間を乗せて逃走のカモフラージュにしようという魂胆だった。最後、屋形船の屋根の上で行き詰まった時、久住は自傷行為を行った上で、船内に戻り、伊吹の暴力行為を訴え味方につけようとするが…声をかければ集まる連中は、皆、ドーナツEPで正常な精神状態ではなく、久住の目論見は失敗する。人を信用せず駒のように使ってきた久住が、自らの危機に際し他人を頼ろうとして失敗したという描写。しかし、成川のように「助けて」と言わず、直ぐに次の策に出て行くところが、久住の徹底した利己主義性を表す。
屋形船での逃走
屋形船を使った逃走。おそらく科捜研や相棒では足取りを見失うパターン。しかし、この物語は、サイバー技術に頼らず、伊吹の動物的能力で解決するMIU404だ。伊吹が広くかつ的確に見ることのできる鷹の眼と、屋形船のスピードを凌駕する脚力で、屋形船内での逃走を発見し、乗り込むことができた。これは、川という逃げ道が前か後ろしかないという制約があるから、一度見つけたら見失いにくいというこたで追跡に説得力が出る。
オリンピックに対する皮肉
開会式のチケットを200万円でも買うという人がいて会場の中は金持ちしか入れないと電話で誰かに話す久住がチラと見たテレビの報道では、「公式ホームページにて無償ボランティアを募集中」のテロップを表示し、女性アナウンサーの声で、「みんなで一緒に東京オリンピックを盛り上げていきましょう」と言っている。
まあ、搾取する側とされる側をオリンピックを皮肉って表現するのは中々良い。
このシーン。久住は、覇気のないというか、浮かれているというか、微妙な表情でテレビに視線をやっている。これ、どういう意味だろうか。開会式のチケットを、200万円でも買う人がいると言って少しはしゃいでいるということは、自分はその立場ではないと考えていることのようだ。そして、無償ボランティアの報道を眺めている。これは、自分は搾取する側にいる認識はあるが、その中では末端で、結局、自分も全体で見たら搾取される側であるということを悟っている目に見える。
デジタル犯罪の無罪を証明したアナログ器械
RECさん、10日間の拘留後に出てきた。虚偽のテロ動画を拡散させた疑いがかけられたためだが、久住にコンピュータを乗っ取られたために起きたものであり、RECの犯行ではない。しかし久住侵入の痕跡が全く残っていなかったために疑いを晴らすことが困難だった。それを救ったのが、志摩のアナログな録音器。デジタルを何故か嫌っているように見えるMIU404。
ちなみに、残念ながら志摩のアナログ機器のRECボタンのアップとかそういうのはなかった。あの手のレコーダーには、録音開始スイッチに赤丸とRECの文字があるのが多いんだけど…それ映して欲しかった。
RECさん志摩さんに説教される
本名晒されて発狂しても、志摩に「今まで あなたが さらしてきた人達も そうだったかもしれませんね」とチクリとされる。RECさん素直だから、黙ってしまう。志摩に「俺に協力しろ」と言われて、「あんた 警察やめるの?」とRECが返されるが、「そうか…俺 やめたいのかもな」と言ってしまう志摩。どこまでが演技でどこからが本音か分からない。しかしRECさん、うまく志摩の言葉に乗せられて協力することに。
ナウチューブアカウントをバンされていたRECさん
俺のアカウントが使えないとなると注目を集めんのからして難しい
ああ、バンされていたこと確定。ということは、最速50万アクセスと喜んだ分の収益化もできなかったのね!かわいそ!
久住の似顔絵
RECと組んで久住を探そうというのも良いけれど、久住の似顔絵使うのは…それ未公開の機密資料だからなぁ…と思ったら下手な複製品か。これは頭が良いな。
志摩の伊吹評と頭の良い九重
伊吹は危なっかしいけど 正しいヤツで 俺はあいつに正しいままでいてほしい
ああいう刑事が一人くらい いたっていいそれに助けられる人が きっとたくさんいる
志摩の伊吹評はこれ。これを聞いて直ぐにピンときて次のように志摩に問いただす九重は、やはり頭が良い。
志摩さんは…つまり刑事として正しくないことをしようとしてるんですか?
いや、頭が良い。なんというか伊吹の動物的勘ではなく、言語的勘が鋭い。これに対する志摩の返しも言語的に頭良い人のそれ。
誘導尋問 刑事らしくなったね 九ちゃん
久住最後の言葉
俺は…お前達の物語にはならない
これ、大きな犯罪の際、マスコミ報道で消費される犯人と被害者の「物語」についての皮肉なのだろうな。それをマスコミの代表であるテレビでやったと。
いぬのおまわりさん
「お前達の物語にはならない」とカッコいいこと言う久住。そしてその流れでおうちも名前も答えない久住。オマエ、迷子のこねこちゃんか?ことあるごとに警察を「おまわりわんわん」と呼んでいた久住の結末はこれかという、なんとも物語的な結末。物語にはならないけれど、童謡の歌詞になら良いのかね。
トラッシュ
そっちか…芥川とか日本語で次の候補考えてたわ。
5円玉の分岐
志摩が、5円玉で伊吹を追うか自分だけで進むかを決めた行為。5円玉落っことしたり芸がこまかいが、ここからアナザーワールドへの分岐が始まったようだけれど、なんかねぇ。必然性のない小細工に見えてしまう。ただ、志摩は落としてしまう。このことにより、この5円玉の行為は特別な意味を持つのだと、視聴者にアピールしている様にも思える。これが分岐だと知らしめるために。
アナザーワールド
うーん、2/3の時間使ってアナザーワールドというか夢オチか。薬の幻覚だとしても、夢オチはいただけない。なんだこれはと言いたいが、東京オリンピックが延期となり、コロナ禍で世の中がそれまでと変わってしまった今という時代を踏まえると、これも有りか。
別な視点で考える。シミュレーションゲームにおいては、マルチエンディングという分岐によって結末が変わるというジャンルがある。これに馴染んだ視聴者であれば、この複数エンドは全く違和感がないだろう。その切り替えにおいて、夢オチは手法としては古典的で受け入れられやすいので、使っただけのことで、それを持って非難されても困ると言われれば、納得せざるを得ない。別に誰かに言われたわけではないけれど。
ハムちゃんファミレスで食事
ちょっとファミリー層向けなファミレスで、桔梗母子と食事するハムちゃん。外で食事できる嬉しさを噛み締めている。就職の話も出て、良いことづくし。だから、椅子が紅白で祝賀ムードを演出。テーブルが白ならカトラリー入れが赤だし、なんと、飲み物も、水のグラスとアイスティー?の紅白になってるし、メインもハムちゃんが赤っぽい料理で桔梗が白っぽいの食べてる。かなり細かく徹底した祝賀。
スパイダー班 糸巻さん
第10話で桔梗隊長にサポートして、と言われたのに出てきてはチョロチョロ足引っ張ることばかりしていたので、絶対に久住を裏で操る黒幕だと思っていたのに、最終回もウロチョロしてるだけの人だった。