season19になって、特命係への他の同僚の態度があからさまに悪化している。特に、杉下より階級の低い冠城への風当たりは、かなり強い。これについて考える。
何が変わったか
一見何も変わっていない。しかしシーズン19に至るまでに色々起きている。最大のものは、甲斐次長の降格。これはseason13でのことではあるが、これにより後ろ盾の強さが低下し、地味に効いて来ている。刑事部の中で、衣笠副総監の影がチロチロしている。これにより、そもそも刑事部内がギスギスしている可能性がある。この辺りは、別に表立って描かれないのでどの程度の影響かは分かりづらい。
明確に描かれた変化
所属が、次のように変更されている。
【旧】警視庁刑事部臨時付特命係
【新】警察庁長官官房付特命係警視庁預かり
捜査一課の属する刑事部に属さなくなっているのだ。警察庁長官官房付というのは、甲斐長官官房付の下ということ。要は甲斐がなんとか守ったものであり、本流の刑事部では廃止の方向で進んでいたもの。加えて、なぜか法務省からのお客様であった冠城が、芹沢より下の階級の巡査になったり…こういうのが地味に効いている。恐らく、これまでも伊丹、芹沢、青木の言動は、良くなかった。それが、後ろ盾のしっかりした杉下視点の補正が掛かっていたのではないだろうか。その後ろ盾が弱くなり、かつ相棒を組む冠城の肩書きもなくなり、認識として感じる伊丹らの言動がキツくなったということは考えられる。つまり、ドラマとして見えている状況は、杉下視点の補正が掛かっているため、これまでは比較的万能感が強く、伊丹の言動など気にする必要がなかったのだが、season19では、少なくとも冠城に対してはあからさまにキツく当たっていることを認識するようになったのだろう。これは、杉下の感じ方の話であり、伊丹の側の話ではないのである。その最たるものが、いつも「暇か?」と言って入って来ていた角田課長が、特命係に激怒するというシーン。このような角田課長は、視聴者は見たことがないが、実際は、特命係の勝手な振る舞いに度々このようなことがあったが、杉下視点では、これと同じ状況であっても、これまでは全く気にならなかったということ。
風当たりが強くなったことを描いた意味
以上のように考える場合、ではなぜこんな表現が必要なのかという問題が出る。まあ、マンネリの打破でしょう。本来、特命係が捜査に口を挟むのは、捜査一課にとって嬉しいことではない。再三、伊丹は現場に来るなと言っている。されでも杉下はやって来る。これは、組織的な立場がなければ、嫌悪する状態である。これまでは組織的な事情や、階級差があったが、特命係の所属変更と甲斐元次長の弱体化により、事情が変わって来たということ、それ自体を、今後、描くということなのだろう。つまり、甲斐と衣笠の権力闘争。
これには、それぞれの尖兵となる、特命係と捜査一課が代理戦争となることが分かりやすい構図として描かれているのである。
出雲の意味
ここで、season19からレギュラー化する出雲の意味が出てくる。出雲は、第1-2話において、特命係に信頼を置いている。しかし所属は捜査一課。特命係と捜査一課が疎遠となり、捜査情報が手に入らなくなると、相棒の2人は今までと異なる努力、つまり、鑑識等の情報を得ることに力を割かなければならなくなる。また、これまでのように勝手に動き回ると、甲斐元次長の方にクレームが行く。この八方塞がりを打破するのは難しいが、出雲ならベストポジションである。しかも、初登場時から、自分の意思にしか従わないようなキャラで、伊丹、芹沢では制御不能の可能性が高い。伊丹らにとっては、要は、特命係の代わりに出雲が表れたということ。
出雲のキャラ
ここで出雲のキャラは、あれで良かったのかについて考える。ギスギス化が進んだ捜査一課において、明るいキャラを置くというのもありうるが、芹沢による出雲の後輩いじめ描写まであるので、やはり強靭な精神をもつキャラ付けが良かったのだろう。追加レギュラーとして、出雲がギスギスしていると不評だが、それを上回る捜査一課のギスギスがこれから描かれれば、出雲のキャラの価値が上がるだろう。毒をもって毒を制す!ということ。