Golden Time

時はお金で買えませんが、時間はお金で買えちゃいます。

【夢中さ、きみに。】第1話 意図的に構築された違和感


オムニバスと言うのだろうか。2つの話が入っている。しかし、2つ目は前後編ある内の前編。なんか変な構成。工夫すれば、前後編を1日で放送できるのに…というか、工夫も何も簡単にできるのに敢えてしていない。理解が追いつかない不思議な構成。面白いと言えば面白いが、理解しようとして観ると疲れる。

「友達になってくれませんか」

偶然が過ぎるんだけど。ツブート(恐らくツイートのこと)への返信なんて、日本中のどこから返されているか分からないのに。翌日出会うなんてことは…あり得ない。それこそ運命ではないか。まあ、ドラマだから良いか。

しかし、映像は綺麗。

最初の自室は、明るい部屋。布団と部屋着が溶け込むような似た色の生地。

2人の出会いは、一面のイチョウ。椅子も暖色系。サツマイモも黄色。黄色、黄色、黄色。

林はメンドくさい男なんだが…

しかし松屋の方もメンドくさい女だな。

「鉄と鉄」で試す林

松屋の勇気を振り絞った告白を、松屋と林が出会うきっかけとなった小説「鉄と鉄」の中のセリフで返す林。そしてそれに同じく「鉄と鉄」の中のセリフで返せなかった松屋に対し、種明かしすることも、他に声をかけることもなく立ち去る林。少し残酷。

そもそも、この「鉄と鉄」というのは、架空の小説なのかな。

苗字

林と松屋。木に関係する苗字。何か意味があるのか、偶然か。何度も観れば何かが見えるのかもしれないが、今は余り見えてこない。

強いて考えると、「鉄と鉄」の本の中身を松屋より知っている林の苗字は、「木と木」ということくらいか。鉄は無機物。木は有機物。松屋によると、「鉄と鉄」は、人間と機械の友情の話。まさに人間松屋と機械のように感情がまったく表に出てこない林との関係。最後の最後、松屋とのやりとりで一瞬笑い顔を見せるが、すぐまた表情が消える。人間と機械の友情が、人間と人間の友情になる日は来るのかな。

「うしろの二階堂(前編)」

話のペースが変則的だし、設定もぶっ飛んでいるので1度観ただけでは、全体が把握できない。ストーリー自体は単純なはずなのに。何かが理解をさせないように作用している。

グイグイくる2人の女

程度の問題はあるが、女が謎の好意を持ってグイグイ押してくる話だな、これ。松屋めぐみも佐藤みのるも、タイプは違うが曲者すぎる。男は、自主的に動いているように思っているだろうが、実は完全に女に惑わされて動いているいるみたいな感じ。
そして、2人の女の想いの根拠が、男への恋心とは言い切れないというか、それが描写されていないところが何とも落ち着かない。
松屋は、冒頭のシーンで仲の良い友達がいるにも関わらず、放課後は友達付き合いするより本の中で生きたいタイプであるように描写されている。そんな松屋が、林と友達になりたいという気持ちは、学校の友達以上の関係を結びたいということなのだろうが、あくまで「鉄と鉄」という小説が軸になった関係であることから、恋愛対象というより、少なくとも本人は同好の士を求める感覚である気がする。林もそれを感じ取ったから、松屋の友達になってほしいという依頼に対し、「鉄と鉄」のセリフで返したのだろう。
佐藤の方はもっと恋愛感情とは繋がらなさそうである。単に、男女分け隔てなく付き合いができるタイプ。名前も佐藤みのると、男女どちらにでも、というか、どちらかというと男の名前が付けられている。佐藤はストーリー上、恋愛要員ではなく、物語を先導する役目を負うと言える。
松屋も佐藤も、恋愛感情ではないのに、本当にグイグイとくるなぁ。そんな攻撃受けたら、男の方は対応に困るよ。平気そうな顔であしらっているつもりの林も絶対に戸惑っているはず。林だって達観してるフリをしているけれど、未だ高校生なのだから。

タイトル

『夢中さ、きみに。』というタイトル。誰が誰に夢中なのだろう。「友達になってくれませんか」は、松屋が林に夢中ということのように思えるが、これは松屋主観で描かれているからであり、林主観で描かれた場合、林が一目惚れしてしまった可能性も無くはない。「うしろの二階堂(前編)」の方は、目高が後ろの席の二階堂に夢中ということだろう。

しかしこのタイトルもストーリー同様メンドくさい。『きみに夢中』で良いじゃんと思う。それを敢えて『夢中さ、きみに。』と倒置してさらに句読点まで付ける念の入った表現にしている。この作品のメンドくささは徹底している。