比嘉賢三と優子と、そして大城オーナーの戦争にまつわるエピソードが始まる。ちゃんとしたと言うとかなり失礼になる、どっしりとした構成。こういうのを待っていた。
真面目なテーマだから、これまでのような隙だらけ風の脚本、演出では済まされないのでガチで来た感あった。
賢三と優子の過去を描くことで、彼らの子供たちがなぜあのようなキャラとなったのか納得できると良いな。そして、それを踏まえて後半が進むのが現状希望するベスト。
- 「長い話になるけど聞いてくれるねぇ」から始まる優子の戦中戦後の話
- 賢三の記録を優子と大城オーナー、三郎で補い視聴者へ提示
- 若い頃の優子の配役
- 賢三が芸人一座にいたところから優子の話はスタート
- 大城の元に帰らなかった賢三
- 救わないとという気持ち
- 血縁の身内と結婚による身内
- 鉄の暴風、シベリア
- いいやつほど、早く死にます
- 「運命の再会だと思った」
- 考えてみれば…
- プロトタイプとしての賢三
- 戦中のことは明らかになるのか?
「長い話になるけど聞いてくれるねぇ」から始まる優子の戦中戦後の話
期待しかないし、少なくともこの第73回は期待を易々超えてきた。
賢三の記録を優子と大城オーナー、三郎で補い視聴者へ提示
賢三の記録を優子と大城、三郎の3人が語ることで、本人しか知らない戦中以外の戦前・戦後の賢三の様子が時系列で描かれる。優子は4兄妹に、大城は二ツ橋に、三郎は田良島に語るので、3つの話を全て聞くのは視聴者のみなのに流れるように進む構成、ホント巧み。
だから強引に田良島が「本日休業」の『あまゆ』に入ってきたのか。
語り手と聞き手を3組用意することで、賢三の生きた時間を極力カバーし、また、賢三を3つの視点から描くの凄い。
若い頃の優子の配役
若い頃の優子を演じる優希美青氏、仲間由紀恵氏にそっくり。良子もだけれど、もはや本人。特に、踊りのシーンの目の表情と仕草がもう仲間由紀恵氏でしかない。
賢三が芸人一座にいたところから優子の話はスタート
賢三のキャリア…。歌手志望から優子の家の経営する食堂の住み込み、召集、出征、そして大城の手伝い、再び沖縄へ歌手の望みを再度持つも成功しなかったと。ただ、賢三が沖縄に留まったのは、歌手話の夢のためというより、優子のためなのだろう。
大城の元に帰らなかった賢三
大城の姉の息子、つまりオーナーの甥が賢三。賢三が唯一の身内というのに、沖縄に戻ってこないのは、それは確かに辛いな。しかし、賢三はどちらかを選ぶしかなかったということか。
救わないとという気持ち
賢三は、生きる気力を無くした優子を見て、救わなければと思ったのかもしれない。同じように生きる気力を無くした自分が大城に救われたように、自分が優子を救わねばと。
血縁の身内と結婚による身内
血縁の身内である大城でなく、結婚して身内となる優子を賢三は選んだと。これ少し不思議で、血縁ではなく新しく家庭を作ることを選んだ賢三と優子だが、その娘良子は血縁を優先しているようだし、暢子が誰とも付き合わないと言っていたのもその流れぽい。二人の思いが、子供の教育において反対の効果を生み出したことは、なかなか考えさせる。賢三と優子の愛情が、強すぎるということのような気がする。
鉄の暴風、シベリア
田良島と三郎の会話では、戦争が恐ろしいことの事例を短い凝縮した言葉2つで表現している。一言すぎるが、それだからこそ重いのだと思う。新聞記者と体験した者の会話だからこそ、短く会話できるというシチュエーションを最大限活かしていると言える。
いいやつほど、早く死にます
三郎のこの言葉。後々、三郎の十字架的なエピソードに繋がるのか、それとも誰か他の登場人物の運命に関わる言葉になるのか。
今これを聞くと、どうしても愛のことを思い出してしまうのだが。今回は本気のエピソードであることは分かっていても、でも、思い出してしまう。
「運命の再会だと思った」
この優子の言葉。優子としてはその通り。大城も恐らく賢三との再会は運命の再会だと思ったはず。そして、賢三としては、結果的に、大城との奇跡の再会と優子との奇跡の再会を比べたということになるのか。どちらも奇跡ではあるが、賢三にとっては優子を選んだと言うのは、仕方がないことかな運命の再会だと思った…と優子は言うが、賢三にとって、大城には感じなかった何かがあったか、大城より大きな何かを感じたかということだろう。
ただ、直ぐ戻ると言いながら、包丁を持って帰ったのは…現地で働きながら身内を探すことを考えていたと言うことかな。包丁は大城が贈ったものなので、包丁を鶴見に置いたまま沖縄に行き、2度と鶴見に戻らなかったら、それはそれで大城は傷ついただろうな。
考えてみれば…
賢三の娘が、賢三に三線を習った三郎の弾く三線の音色に惹かれて三郎の家に飛び込んでくるという奇跡…というか、「三」の文字多いな。まあ、これはドラマだから良いが、それにしては初対面の時は、三郎は驚きが小さかったような気がする。ただ、直ぐにお茶目ないたずら心が起きたのは分かる。翌日、よりによって紹介状を自筆して大城のところに行かせるのだから。
賢三・三郎の名前に三を付けた理由は、三線を弾くからなのだろうな。同じように歌子と和歌子は、意図的に歌という字をつけていそう。歌子が沖縄、和歌子が青森なので、歌子は三線で沖縄民謡、和歌子は津軽三味線で津軽民謡で歌手として出てくるのではないか。歌子はやると決めただけでまだ初めて無いし、和歌子は民謡をやっているそぶりはなかったけれど。
プロトタイプとしての賢三
賢三は、戦争の前後を通じて、多くの人生の選択を迫られながら必死に生きてきた感じがわかる。しかしその中で、仕事が安定しない、大城の所に戻ると言っておきながら戻らない等、賢秀、暢子の原型のような行為が見られる。
戦中のことは明らかになるのか?
笑わなくなってしまった賢三を変えた出征の過酷さについては、描かれないのだろうか。語り手を3人投入させていることから、もう少し話が進むと、賢三の軍隊生活、つまり戦中のエピソードも、第4の人物によりもたらされ、描かれるのだろうか。