Golden Time

時はお金で買えませんが、時間はお金で買えちゃいます。

【フルーツバスケット】これは逆ハーレムではなく神の話


主人公が、周りの好意に対し鈍感であるという、ハーレムの黄金パターンは踏襲されている。しかし、もちろんフルバ独特の設定が用意されている。

ぼっちでは無い

ハーレムものは、異性にはことごとく好かれるが、同性の友人は、添え物程度もしくは、極端な場合、同性の友人はいないぼっちという設定になりがちであるが、このフルバでは、魚谷ありさ、花島咲の2人が、親友と呼ぶ以上の感情を持って主人公本田透に絡む。魚谷は元ヤンキー、花島は電波を操る女と、普通では無い個性を持ち、それ故に生きづらい中学生活を送っていたが、その生きづらさからの解放に、普通人にしか見えない透の力が関与しため、2人は透を全力で信頼し、守るという設定も納得がいく。また、十二支絡みでは、女性の物の怪憑きもおり、彼女らとも良好な関係を築きあげるので、単なる人タラシであり、逆ハーレムというより全方位ハーレムと言った方が良いかもしれない。

好感を持つのはキャラ設定のおかげ

フルーツバスケットは、希代の人タラシ、本田透の物語と言える。そして、関わるもの全てが透に惹かれ、性別を問わず絡め取られていくのであるが、透の印象は悪く無いように描かれている。これは、物語が始まる前の透の悲惨な生い立ちと、本人の理由不明のポジティブさ、および、絶妙な他者との距離の取り方によるものである。透に対し好感を持つよう、過剰なまでのキャラクター設定が施されているのである。

逆ハーレムなのか

本田透の立場に自分を置いて考えてみれば分かる。透の立場は、かなり神経を使うポジションである。

同居人

由希、夾、紫呉の草摩家の面々と同居。3人とも一癖も二癖もある。そんな中に、ちゃんと溶け込む透のコミュ力。そもそも、穏やかに行われていたように見える由希、紫呉2人の同居に、夾が入った際に、既に透が草摩家にいたことは大きい。3人がそれぞれ透との関係をすぐに築いたため、夾の同居に成功したが、透がいなければ、夾と由希の間の溝は開いたままで、互いに交わることはなかった。3人の作る正三角形の重心部分に透がいたことが、草摩の3人が同居できる重要なパーツであった。

親友

元ヤンキーの魚谷と電波女の花島。彼女らは、2人とも、中学時代に透に救われた過去を持ち、透のことを初めての親友と自認する。このため、実際は親友というより、義理を感じて透に接するポジションとなっている。故にこと透の身に危機が及ぶ可能性がある場合は、透のことを最優先する思考・行動に出るし、普段の言動の端々に、透を思いやる感情が溢れてしまっている。普通の人であれば、これは重い。しかし、さすが透である。軽くいなしている。だからこそこの3人は親友と言える。しかし、やはり透もこの2人に対してもかなり神経を使っているはずである。

親戚

祖父の新築の家に同居するおば家族。彼らは、自分達を守ろうとしている。息子の就職先が警察なので、素性の良くない者と同居して、不祥事を起こされてはたまらないという理屈から、透を結果的に追い出す。これは間違ってはいない。ただし、その家の所有権が誰にあるかが問題にはなる。元々祖父の住んでいた家におば家族と同居するために二世帯住宅を新築した経緯から、土地は祖父所有、新築した建物は所有権がおば家族にあるのか祖父にあるのかは分からない。住所にもよるので土地の価格は不明であるが、仮に建物はおば家族所有で、価値が半々としても、新築後の家は、祖父の意向が働いても良いはずである。そこをおば家族の強引なロジックで圧され、透が窮地に陥るが、なぜか由希と夾が現れるというマジックで救われるが、これはキツイ。

勝手に敵視する人

学校一の王子様的存在である由希と一緒に通学しただけで、昨日尋問されてしまうのは、ちょっとどこの秘密警察である。

以上、透の周りを見てみると、味方は多いものの、神経を使うものたちばかりである。これを日常として過ごしていけるのは、本田透だからこそである。

人を惹きつける才能

以上を見ると、とにかく透は多くの人間を惹きつける。良い感情を持つ者もいれば悪い感情を持つ者もいる。性別を限らないので、ハーレムというより、人を惹きつけると言うべきである。そして、その才能は、夾にもあるのである。この2人に共通する才能が無いため、由希は一人苦悩しているのである。この構造は結構深い。