Golden Time

時はお金で買えませんが、時間はお金で買えちゃいます。

Anarchy in the UK モトリークルー版


"Anarchy in the UK "と言えば、"God Save the Queen"とともにセックス・ピストルズの代表曲である。この曲は多くのアーティストにカバーされており、ヘヴィメタル/ハードロック界のモトリークルーもカバーしている。

Mötley Crüe  版 Anarchy in the UK 

(youtube モトリークルー公式)

以下に違いを挙げる。

演奏

テンポが速くサウンドも軽快になっている。パンクのいかがわしさが薄れ、変な言い方であるが、健康的な曲になっている。まさにLAメタルだと。ギターは、リフもソロもオリジナルを踏襲しながらも少し離れている感じで、オリジナリティもある。

歌詞

ヴァース2

次の違いがある。

【ピストルズ】Anarchy for the U.K
【モトリー】Anarchy for the USA

これは、ピストルズが英国のバンドで、モトリーが米国のバンドなのでそれに合わせているということになる。同じ読み替えはヴァース3にもある。

ヴァース3 その1

国情と時代により歌詞変更なされている箇所がある。

【ピストルズ】
Is this the M.P.L.A.
Or is this the U.D.A.
Or is this the I.R.A.
【モトリー】
Is this the PMRC
Or is this the DEA
Or is this theCIA

M.P.L.A.は、当時内戦状態であったアンゴラの政党、U.D.A.とI.R.A.は、イギリスの過激派組織。つまり、ピストルズ版の歌詞は、「これ」は過激な組織なのかと聞いている。

一方のモトリー版では、PMRCは音楽の過激表現をチェックする団体、DEAは麻薬取締局、CIAは米国中央情報局と、いずれもアメリカ国内の行政的組織で国民の「自由」に制約を及ぼす可能性のある組織である。つまり、モトリー版の歌詞は、「これ」は自由抑圧組織なのかと聞いている。

ヴァース3 その2

次のような変更がある。ここで「これ」の正体が明かされる。

【ピストルズ】
I thought it was the U.K.
Or just another country
Another council tenancy
【モトリー】
I thought it was the U.S.A
Or just another country
Some other fucking country

ピストルズ版では、『「これ」は、英国だと考えていた。そうでなければ他の国、他の公営住宅の賃借人』となる。一方のモトリー版では『「これ」は、米国だと考える。そうでなければ他の国、クソッタレな他の国だと思った』となる。どちらも最後の文が分かりにくいが、直前の文の意味を再度言っていると考えられる。council tenancyは、英国の制度なのでアメリカに合うように歌詞を変えたと考えられる。しかもピストルズ版で分かりにくい部分を、単純化して聞きやすくしている。これは、モトリー版の演奏の軽快さにも通じる。

モトリーが行った変更の役割

Anarchy in the UK は、当時のイギリスの状況、世相を表す曲であることを踏まえたで、アメリカ人に分かりやすくなるような加工をモトリークルーが行なっていることは、既に見たとおりである。つまり、歌詞の内、イギリスの状況を表す固有名詞は代替となる米国の固有名詞に入れ替え、かつ、曲調をより軽快でポップな感じに仕上げている。Anarchy in the UK は多くのミュージシャンにカバーされている。その際、"UK"の部分を自国に変更する例は見るが、モトリークルーのように、組織名のところまで変える例は少ない。この辺りモトリークルーのこだわりと言える。ただその拘りの理由は分からない。モトリー独自のメッセージ性を持たせるという意味かもしれないし、商業的成功のための分かりやすさという可能性もある。