「キャンディ・キャンディ」の主人公キャンディは、何かあるとすぐ今までと全く違う環境に行って人生をリセットしてしまう生き方をしている。これは普通の人ではなかなかできないことであるが、このキャンディの行動に感化されたためか、周りの人間も変わっていく。そんな中で、物語当初から登場しているが、終始一貫変わらない性格をしている人たちもいる。
アニー・ブライトン
物語の最初から最後まで出てくるアニー。キャンディと同日にポニーの家に預けられた少女。彼女はずっと"かわいそうなアニー"で通した。「キャンディ・キャンディ」を読んだ方の中に彼女を嫌う人は多いが、連載当時の価値観から見てアニーの生き方はそれほどおかしいわけでもなく、理解できる考え方のはずである。我がないわけでも主張しないわけでもない。ただ、自らの強さで主張を通すのではなくて、弱い自分という立場を使ってアプローチしているだけである。これも生き方であり、珍しいものでもない。しかし、だからこそ、身近にいたり、自分の中に潜むアニーの要素を見るような気がして嫌われるのだろう。いわゆるブリっ子という形態である。しかしアニーはそれを突き通し、物語の間中変わらなかった。何にでも口や手を出してしまうキャンディが逆の意味で変わらなかったように。アニーは、キャンディの生き方と対比させるために置かれたキャラクターと考えると、キャンディと同じ日に預けられたというエピソードにも、最初から最後まで徹底して生き方が変わらなかったことにも意味があると言える。三つ子の魂百までもなのである。
アーチーボルト・コーンウェル
アーチーも変わらない。兄のステアがテリィとキャンディの生き方を見て考え方が変わっていったようなことはアーチーには起きなかった。その意味でアーチーは、ステアとの対比のために置かれたキャラクターと考えられる。つまりアニーとキャンディの対比のような関係である。その意味で、アーチーとアニーが恋人同士になることは似た者同士の組み合わせとして理解できる。
イライザ・ラガン
イライザも終始変わらなかった。兄ニールが最終的にキャンディに恋してしまうのとは対照的にイライザは最後までキャンディを嫌った。キャンディへの嫌い方のアプローチ方法が、最初の出会いである話し相手としてラガン家に来た際の単なるイタズラから、メキシコへ追いやるようなキャンディの人生を左右するものになり、キャンディがアードレー家の養女となったらさすがに下火になったが、アードレー家の力が及ばないロンドンの聖ポール学院では、再度息を吹き返し、今度は学校を利用してキャンディを退学騒動に巻き込む。しかし学院に見切りをつけ、独立独歩で生きていくキャンディに対しては、それ以降、嫌味を言うことしかできなくなり、最後は、ウイリアム大おじさまがアルバートさんだったことの判明を以って、嫌味さえ言えなくなった。「キャンディ・キャンディ」の物語は、イライザの顔色を見ていれば、時々のキャンディの置かれた状況が分かるほどである。その意味で、最後までキャンディを嫌い通した点は人としてどうかとは思うが、ストーリー上のキャラクターとしては、アンソニー、テリィクラスの最重要人物である。
ペアリング
アニーとキャンディ、アーチーとステア、イライザとニール。「キャンディ・キャンディ」において、変わらなかった者は、変わっていった者とペアで登場していることがわかる。これは3組のペアで見られるものなので、意図的になされていると考えられる。しかも、最終的に変わらなかった者同士のアニーとアーチーがペアになるというおまけ付き。なお、テリィもアルバートさんもキャンディと出会うことで変わって行くが、こちらはペアがいない。変わらないキャラが登場する場合だけ、ペアができるのであって、変わるキャラは単独で存在可能なのだろう。これは、ペアを組ませることでどちらかのキャラを強調する引き立て役の意味を持つと考えられる。