第13巻127ページで初登場する独特な髪型の幼馴染の織田文生(あやき)ちゃん。
彼女はテニスにおいても恋においても、ひろみのライバルになりうるキャラクターであったのに、物語の展開の中、埋もれ淘汰されてしまった。残念なことである。
貴おにいちゃん
これまで、藤堂貴之のことを下の名で呼ぶ者は、藤堂の姉以外いなかった。しかも「おにいちゃん」付き。ひろみにとって、これはとんでもない人間が現れたといえる。幼馴染み属性かつ妹分属性…強力すぎる属性のキャラクターである…はずであった。
登場タイミング
登場するのが遅すぎたとも言えるが、彼女のような、恋のライバルキャラは、特訓によりテニスの腕を上げることが全てで、藤堂が「女の成長を妨げるような愛し方はするな」と釘を刺された第1部には必要なかった。この段階は、藤堂が名前も知らないようなモブキャラがキャーキャー言う程度がちょうど良く、完全なライバルは必要なかった。そもそもひろみと藤堂の交際も宗方コーチに認められていなかったし。このようなキャラが必要になるのは、藤堂との交際が公認され、恋愛がテニスのプレイの糧になる段階に至る必要があるため、宗方コーチが亡くなり、藤堂との関係もしっかりしたものになったこのタイミングでの登場となったのだろう。その意味で登場タイミングは問題なかった。
メインストーリーとの絡みにくさ
ただし、「エースをねらえ!」は、テニスで高みを目指していく話なので、心乱される恋のライバルの存在は、第1部の制約ある愛ならば、精神性を高めるという点で良いが、宗方コーチの死を克服していく過程で精神性は高まり、ひろみが独り立ちしていく様を描く第の中では馴染みにくかったのだろう。
ストーリーが既に世界で戦うというレベルになっているのが大きい。いくらアメリカ帰りで米国で女子サーキットを回っている者の妹とはいえ、絡ませづらかったのだろう。文生が西校の後輩になると知って、ひろみは、文生ちゃんが英さんと戦ったらどうなるか、自分が戦ったらどうなるかと自問するのだが、結局、これは実現せず、文生エピソードはお蔵入りになってしまった。今さら恋のライバルといっても、テニスで高みを目指すという話のスピード感が落ちるだけだろうから。
ただ、宗方コーチの庇護がなくなった状態で、恋のライバル登場により焦り、女の成長が妨げられてしまうようなことになったら、藤堂はどのように立ち回ったであろうかというのは、もしもの世界として見てみたい。あんなに宗方コーチに釘を刺されていたのだから。
幼馴染みキャラ
今でこそ幼馴染みキャラは敗北フラグであるが、「タッチ」の浅倉南の様に幼馴染みは超強力なパワー属性である。「タッチ」の連載開始は「エースをねらえ!」の連載終了翌年であり、時代的には近いので、幼馴染み属性である文生さんは、もっと活躍して欲しかったキャラである。妹キャラとしてのポジションを確保し、ひろみと共存するという形でも良かった。せっかく生み出されたキャラクターなので、もっとその姿を見たかった。
その後の文生さん
消息不明…