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【秒速5センチメートル】小説版とは何か


「秒速5センチメートル」には、小説版がある(マンガ版もあるが別途)。

詳細はこちらも別途考えるとして、ざっくりその存在意義と位置づけを見ていく。

なお、小説版は角川文庫版を元にしている。

映画版との関係

作者あとがき

作者自身が小説版について以下のように語っている。

映画と小説で相互補完的になっている箇所や、映画とは意図的に違えた箇所などもあり、映画の後で小説を、あるいは小説の後で映画をご覧いただければ、より楽しんでもらえるのではないかと思う。

これが小説版の位置付けを語っている。基本的にこの小説自体が映画の解説となっている。故に映画で読み取れなかったこと、意図が分からなかったこと等の答え合わせをするために存在するのが、この小説版ということである(私にとっては)。

内容的比較

基本的には、映画版では具体的に描かれていなかった登場人物の気持ち、考え方が、小説版では文字で具体的に書かれている。このため、小説版の方がわかりやすい反面、映画版で自分が読み取ったのとは、実際は異なる心情であったことが分かったりする(もしくは、それが作者あとがきで言う「意図的に違えた箇所」かもしれない)。

画でしか表現できないこと、文字でしか表現できないこと

映画版と小説版は、それぞれの特徴を踏まえて描かれており、それが作者の言う「映画と小説で相互補完的になっている箇所」なのであろう。こだわりすぎとも言える美しい背景は、それに比べて単調で、かつ場面毎に顔つきも変わっていて同一人物と認識することも難しいこともある人物描写とあいまって映画では独特の表現となっているが、これは小説では描かれず、その代わりに、各自の心情が説明的に描かれている。これが故に、「秒速5センチメートル」は、映画作品としてまず発表されたのだろう。作者は「映画の後で小説を、あるいは小説の後で映画をご覧いただければ、より楽しんでもらえるのではないかと思う」と言うが、その列挙の順でも明らかなように、映画を先に見ることを元々は想定した作品であるはずである。