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【俺の家の話】最終回 本当に家が大切な観山家


完全ネタバレです。そもそもこのブログはネタバレ前提なのだけれど、『俺の家の話』最終回は、事前知識なしで観なければ、感じるべきものが感じられないと思うから。なので、このブログに限らず、先ずは最終回を観るべきと思います。

観た後の方は、ぜひ下をお読みください。

煙突。天に登る煙からスタート。どう見てもこの煙突と煙が暗示するのはただ1つ。まあ、コメディの最終回でこんなスタートをするのは、かなり異質。期待しつつも先を見るのが少し怖いというドキドキ感が味わえる。味わえるというのは不謹慎な気もするが。

このドラマ、本当に家、観山家の存続問題の話だった…

遺言書

遺産は均等!…これ、どうなのだろう。難しいやつだ。介護の問題ともセットにならざるを得ない。確かに寿一が戻る前も踊介と舞は介護していたと言うし、寿限無は寿三郎の芸を継ぎつつあるし。戻ってきてからの寿一の献身のみを取り上げるのは違うであろうから、均等というのも一理あるのかもしれない。ただし、寿三郎の遺言書なので、単に兄姉弟平等という意図ではないように思える。

宗家の継承については、寿一と書いてあったという。寿一が生きていれば、寿限無にとっては屈辱的な話。結果的に寿三郎は長寿を全うしたようだが、そうでない場合、寿一はろくに演目を習得していないまま宗家を名乗ることになるのだから。寿限無に習いながらの宗家という形になってしまう。それは無いだろと。

新春能楽会

この、『俺の家の話』が、『隅田川』を踏まえた物語だったと。家を出たのが、自らの意思か連れ去られたのかの違い、亡くなる前に再会できたことの違いがあるが。

前回の戒名「吹雪院親不孝革命居士」

前話で長州力が寿三郎用に付けたはずの戒名がどう見ても寿三郎用ではなく、寿一用だったから、怪しい感じはあった。実際は「吹雪院親不孝脛齧居士」に変えられていたが。しかし戒名というのは寺につけてもらうのではないのだろうか。しかも、そんな勝手をしながら、墓はかなり良い場所に建てられていたが。観山家ともなると戒名は勝手にでつけることが出来るのだろうか。まあ今回の戒名は、安そうというか、住職は絶対につけないだろう名前だったが。

ところで、長州力は、何故、寿三郎の戒名を聞かれて、明らかに寿一用の戒名を付けたのだろうか。ここ、長州らしいからで済ませてはいけないはずなのに、説明されていない気がする。

「革命」から「脛齧」へ変更の意味

革命とは組織構造の抜本的変更を意味するが、脛齧はその逆で、組織体制下で、その組織体制には全く影響力を及ぼさずにおこぼれをもらう立場である。寿一は、観山家を飛び出し、戻ってきた時には、古い慣習を打ち破り、外で得た経験を活かした改革を能の世界にもたらしたのであれば、25年のブランクも意味があるが、結局、寿一がしたのは、金銭的にも行き詰まって実家に転がり込んできた以上のものはなく、何か新風をもたらすこともなかった。結局それは親の脛を齧りに戻ってきただけだという状況を戒名に折り込んだということである。

寿一と寿三郎

生物的に死んだ寿一が、魂として生きている描写。そしてそれは寿三郎にしか認知されないと言う設定。これは、他者には寿三郎の認知症の世界の話と見えるというのが何ともしっくりくる設定。ある意味やはり、寿一は自分がなく、寿三郎というか、観山家の意思の通りに動くコマであったということ。寿三郎が亡くなった寿一に対し「人間家宝」と褒めるのも、やはり家がベースの考え方でしかない。

なお、もう一人、認知症ではないが謎の感覚で生きている長州力も寿一の魂が見えている。寿三郎と長州という複数人が認知できているという点で、視聴者には、寿一の魂が、寿三郎の認知症の症状から生まれるものではなく、実在するのだと認識することができる。これは巧妙である。

寿一が墓前に現れたこと

さくらが2022年4月、桜が満開の中、寿一の墓前に墓参りに来た際、寿一が現れる。その際、マスク(マスクといってもコロナ対策のマスクではなくスーパー世阿弥マシンのマスク)を取ろうとする寿一に対し、さくらは「あっ とらないで、とらなくていい」と言う。この意味。これは、殺気を家庭にも持ち込むのがイヤというユカのセリフがあり、後日さくらもそれが理解できると愚痴っていたが、これに対するのがマスク取らなくて良いと言うセリフにつながると思える。つまり、プロレスラーとしての殺気を帯びた姿こそ寿一本来の姿であると。逆に、観山家の中にいるときは、さくらが「本当にないんですね、自分」と言うように、あくまで「家庭」という意味の「家」ではなく、「観山家」という意味の「家」のことしか考えていない。だから、さくらはマスクを取らなくて良いと言った。寿一にとっては、殺気を放つスーパー世阿弥マシンである時の方が、マスクを取って観山寿一である時より、寿一らしいということを、さくらは理解していたのだろう。

寿一は、スーパー世阿弥マシンのマスクを取ったら、今度は観山家の一員という見えないマスクを被らされているということ。舞は、観山家では嫡男を特別扱いすると指摘していたが、嫡男も特別扱いされる代わりに見えない仮面を被らなければならないのである、

セックスシンス

この駄洒落。「セ」と「シ」が入れ替わっている!これを舞がさくらに言うのは、なんとなくさくらに、寿一とセックスしてないねというニュアンスを感じるし、寿三郎を揶揄しているとも取れる。寿三郎と寿一二人の婚約者になったさくらに対してだからこそ言える駄洒落でもある。全く失礼な話ではあるが。

大州

なんか暗い感じのストーリーの中でコメディリリーフにされた大州の人生とは、何なのだろうか。今後の人生の充実っぷりというか波瀾万丈ぶりというか、すごい人生歩むな大州。しかし8年という、おそらく退学になる直前で大学をちゃんと卒業した大州は、秀生と異なり、芸事には集中できなかったが、学業にはちゃんと取り組める才能を持っていたのだろう。8年かかったのは、遊んでいたり、勉強が継いていけなかったりではなく、子供二人と妻を育てるために働きながらであったのだろうから。秀生との人生の対比がメリハリついている。普通は、芸事に進むのは勇気がありそうで、無難な生き方として大学に進むことを考えそうだが、観山家では、能楽師の道に進むことが無難な道であり、大学に進むのは波乱の生き方だということが暗示されているのではないだろうか。まあ、女好きなのは、祖父寿三郎も父O.S.Dもなので、遺伝的にどの進路に行っても、デキ婚になった可能性は高いと思うけど。

寿三郎の遺伝子

女好きの血は大州に、能楽師としての血は秀生がちゃんと受け継いだということか。あれ?ならば、舞は男好き、寿一は能の才能ありということか?20年前の、何処の馬の骨かわからないO.S.Dと結婚できる舞はある意味男好きだろうし、踊介は才能ないと断言されるから逆に寿一に能の才能はあるということか。一応、筋は通っているな。20年前のO.S.Dが売れないラッパーだろうが売れっ子だろうが、どちらにしても、若いラッパーと結婚するということができるというのは、舞がただものでは無いことを示している。今のO.S.Dではなく、あれが若いのだから、普通の彼女じゃ手に負えないだろう。無自覚で家に囚われている舞だからこそ子供を産み育てることができたと言えるかもしれない。なお、堅実にラーメン店を経営していることから、O.S.Dは、そこそこ売れていた可能性はある。

観山家視点で観山家の面々を生き方で分類すると、以下になりそう。

①芸一筋型:寿限無、秀生

②波瀾万丈型:寿一、大州

③一般人型:舞、踊介

ここで、寿三郎はどこに属すか考えると、①+②とも思えるが、観山家視点では①だろう。観山家視点では、寿三郎の人生は、波乱万丈でもなんでもないからだ。女性問題でどんなに家族を悲しませていても、ちゃんと先代から受け継いだ芸を次の代に受け継いでいる。ただ、寿一問題で、寿一に継承していたら危なかったたけれど。

寿一が死んだということ

長瀬智也氏が、二度と観山寿一役を演じるということはないということ。つまり、長瀬智也氏が、二度と役を演じるということはないということ。つまり、長瀬智也氏が芸能界を引退するということ。そして、前回も1度出てきたが、今回はずっと、ドラマの中で、(寿三郎以外には)いない人として描かれていたが、これが長瀬智也氏が今後、芸能界の裏方に回るということを暗示しているのかもしれない。長瀬智也氏は、表舞台からは消えるが、裏側には存在し続けると。

プリティ原の話は後にしよう

能の稽古に大州とともにプリティ原が練習している。なぜ習っているのかは、「プリティ原の話は後にしよう」という寿一の語りが入って飛ばされる。その後、語りの中でプリティ原が言及されることはない。あれ?…代わりに謎の覆面レスラー、スーパー世阿弥マシン2号が登場する。2号の正体は誰なんだろう。これも言及されることはない。プリティ原のその後も、スーパー世阿弥マシンの正体も明かされないまま物語は終わる。

長瀬智也氏の膝

ドラマの中で、寿一が畳に座る際、左足だけ投げ出して座っていた。これ、膝を過去に痛めたことのある人なら分かる座り方。今現在痛くなくても、爆弾を抱えていると、畳の上ではそのようにしか座れなかったりする。これをドラマの中でやっていた。2回くらい気がつき、プロレスラー役だからこう言うところリアルに表現するなぁと思って観ていたが、撮影中に実際に膝を痛めていたらしい。あの座り方は、過去の怪我を表しているのではなく、現在進行形で長瀬智也氏が痛めていたらしい。

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