Golden Time

時はお金で買えませんが、時間はお金で買えちゃいます。

【俺の家の話】寿一と寿三郎が裸の王様になる話か?


寿一…寿三郎に色々言われても出ていかない。行くあてないから。

寿限無は行く宛てが有ったということか、良かった。まあ、行く宛てなくても、バイトがあるから、観山家にいるより楽しく生きていけるでしょ。

総取りの寿一

寿一の"一"は、一番の"一"ということか。観山家の兄弟の中で一番の長男。この生まれだけで寿一は何をやっても許される。家を飛び出ても、戻ってきたら宗家になることができる。寿限無が当然のことを言って家を飛び出ようとした際に、胸ぐらを掴んで、力づくでやめさせようとする。周りが、寿一は観山家長男だからという呪縛から解放されつつある中、本人はその呪縛に気付いていない。自分は家の中で何をやっても許される、なぜなら長男だからというのは、もう染み込んでいるのだろう。まあ、だから最後に観山家に残ったのが、寿三郎と寿一ということ。寿限無は逃れられてよかったねという感じ。

生まれながらにして特別視される存在

空っぽいうより透け透けやな。与えてはくれるけど、こっちが返しても受け取ってくれへん

元妻ユカはこう寿一を評している。これ、生きる上での軸が、夫婦になっても合わなかったと言っている。人間世界とは別なところに寿一は生きている。その別なところとは、その他大勢の人間に対しては与える立場であるが、その他大勢からのアプローチは受けない…その点では、プロレスも能も同じ。能からプロレスに逃げた寿一であるが、ある意味、全く異なる世界ではなく、同じ側面を持つ世界に逃げたと言える。とにかく特別視が当たり前なので、特別視されないと生きていけない。そして、ちゃんと特別視してくれる人が周りにいる。今も、さくらは寿一と寿三郎にさえも特別視してくれている。このような人がいる限り、寿一は生きていける。しかし、そのような人が去ると、寿一も寿三郎も何もできなくなる。これが第8話。

裸の王様になった寿三郎と寿一

結局、周りの支援がなければ何もできないことに2人は気づいたようで、寿一は寿三郎をグループホームに預けることを提案するし、寿三郎はそれを受け入れる。それしか無いから。相手の寛容があったから自分たちが好き勝手に振る舞えていたのだ。その意味で行き詰まった2人の状況はかなり深刻である。しかも、2人は未だ相手の寛容、自分の好き勝手さに気付いていない可能性さえある。深刻さが増す。

宗家の正当性/正統性

能をまともに舞えないが長男の寿一と、ちゃんと舞うことのできるが養子の寿限無。宗家を継ぐための正当性/正統性はどこにあるのか。現実問題、寿限無は能一筋に生きてきた、寿一はずっと逃げてきた。跡を継ごうにも寿一は、舞えないのだから、能力的に継げないだろう。それを寿三郎は分かっているので、孫の秀生に継がせようとする。しかし認知症が進み時間がない。ここに、宗家概念の歪みが現れている。そして、寿限無は実は血が繋がっていたという事実もあるので、これは最早、能の家として考えれば、寿限無に継がせる以外道はない。しかし、寿限無も、今度こそ寿三郎を見限って出て行ってしまった。ストーリーはうまい具合にねじれている。