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【キャンディ・キャンディ】良識あるラガン夫人


「キャンディ・キャンディ」にはアードレー家、ブラウン家、コーンウェル家、ラガン家、グランチェスター家等が登場する。この各家の親の教育方針について考える。すると、意外に思うかもしれないが、ラガン夫人が良識ある大人であることがわかるのである。

ブラウン家

アンソニーの親は、アンソニー登場時点で亡くなっているので、父親だけである。船乗りであるため、息子と暮らすことはできない。ステアの葬儀で初めてキャンディに会ったとなっているので、自らの息子アンソニーの葬儀の際も航海に出ていて戻れなかったことになる。もしくはキャンディは葬儀自体に参列できなかったから会えなかっただけの可能性もある。職業上やむを得ないとはいえ、教育についてはエルロイ大おばさまに一任となっている。

コーンウェル家

ブラウン家と同じくエルロイ大おばさまに一任。ただしコーンウェル夫妻はともに健在であり、また、仕事も船乗りのような一緒に暮らせない仕事ではなさそう。ただし、仕事はアラビアで行なっており、恐らく教育環境的に生まれ育ったアメリカの方が良いという判断で子供達を残したのであると考えられる。

グランチェスター家

こちらは貴族であるグランチェスター公爵は、テリーを全寮制の聖ポール学院に多額の寄付とともに入れているが、息子のすることについて何も口を出さない。母親は継母で、テリィを公爵が認知していることに不満を持っているためテリィと折り合いが悪い。実の母であるエレノア・ベーカーは、テリィとは離れて暮らしており、教育について言える立場ではなかった。テリィの置かれた環境は、教育は受けられるけれど、親の愛情を感じられないものとなっている。

ブライトン家

アニーに対しては、養子とした当初は、「ほしいものをなんでも買ってくれます」とアニー本人がキャンディへの手紙の中で言っている。これは一見、甘やかしているように見えるが、それまでのポニーの家での生活対比の話と考えれば、良家の子女としてはそれほどの贅沢ではなかった可能性がある。しかし特に教育方針らしきものは伺えず、アーチー、ステア、キャンディがロンドンのセントポール学院に入る際は、アーチーに恋するアニーの無理を聞いて行かせており、やはり娘に甘い親という感じはする。なお、キャンディに再会した際の言動や、付き合ってもいないのにアーチーを取らないでとキャンディに言ったりと、アニーには、か弱い女のイメージの中に自分に素直過ぎる言動が見られる。これはブライトン家での甘やかしではなく、養子となるまでに培われた性格が続いているもしくは強化されたためと考えるべきである。現に未だポニーの家にいるときに、貰われるのはお百姓さんは嫌と言ったり、養子となった直後の手紙ではキャンディに会いたいと書きながらしばらくしてポニーの家にいたことは忘れたいと一方的に書いて手紙のやり取りを打ち切っている。三つ子の魂百までの類である。

オブライエン家

パティに対する教育的な考えはマンガからは伺えない。

そしてラガン家

ラガン家は、父親も出てくることは出てくるのだが、存在感がないので、教育的なことはラガン夫人の言動とニール、イライザの言動から考えるしかない。

ラガン夫人の自らの子供に対するスタンス

基本的により良い教育環境を与えようとしているように思われる。家庭教師が38回変わる事態はさすがに何か問題があり、家庭教師を変えることを繰り返しても現状が変わらないと判断したが故に、話し相手としてキャンディを雇うことを決めたのはその最たるものである。この時にイライザ、ニールの側に問題がある

ラガン夫人のキャンディに対するスタンス

ラガン夫人自体はニールやイライザと異なり、最初からキャンディに冷たく当たっているわけではない。

最初は個室付き

最初は屋根裏部屋ではあるが個室も与えている。また、ニールのいたずらにより夫人のお気に入りの花瓶を割った時も嘆きはしたが、叱りつけたりそれで罰を下しはしていないようである。また、挑発に乗ってニールと掴み合いの喧嘩になった時も、「らんぼうな子」「口ごたえ」を理由に夕食は抜きで部屋で反省させているが、自分の子たちに甘いとはいえ、理由もあり、罰の程度も酷過ぎるとはいえない。キャンディを引き取った理由は話し相手であり、掴み合いの喧嘩を自分の子に対してされることは望ましくないので、冷たい対応ともいえない。これらはラガン家の中の騒動であり、ラガン夫人の裁量でなんとでもできるものである。

ラガン家外でも騒動を起こすキャンディ

しかしキャンディは、エルロイ大おばさまのスピーチ中に笑ってしまう。こんなキャンディの行為にたいしラガン夫人はエルロイ大おばさまに謝らなくてはならなかったり、ダンスで使用人であるキャンディがパーティの主役であるアンソニーたちと踊ったりするのだから、ラガン夫人も大変である。キャンディはラガン家外の騒動を引き起こしているのだから。原因はフリーダムなアンソニー、ステア、アーチーであることは本人たちが認めるのでキャンディを責めることはできず、エルロイ大おばさまは無表情でいるしかない。しかしラガン夫人としてはアードレー家本家のエルロイ大おばさまの心象を悪くしたくないので、「とにかくあの子をこのままにはしておけないわ」と心悩ませるわけである。

警告も

故にキャンディを話し相手から馬番兼使用人見習いにしたのは、責めるべき行為ではない。またその際、「こんど目にあまる行動をとるようでしたらでていってもらいますからね」と警告もしている。

猶予期間

そしてその後のお茶会でもキャンディは止めに入ったアンソニーも巻き込んで暴れてしまう。その結果、ラガン夫人は「すぐにもでていってほしいのよ!」「おまえのような子がいては ニールとイライザのためにならないし…」「でもポニーの家とのやくそくなので つぎの仕事場が 見つかるまではおいてあげます」と言っている。ラガン家は事業を行っているはずなので契約を破ることはしない。ラガン夫人は自分の気持ち的にはすぐに出て行って欲しいと思いながらも、契約があるからそれに従うという大人の対応をとる。

ダメ押しの盗難事件

しかしダメ押しで盗難事件が発生してしまう。流石に犯罪はダメである。これはラガン夫人に「あしたおまえを メキシコにやります!」と言わせてしまうことになる。ニールとイライザの策略であるが、それを知らないラガン夫人は、これまでステップを踏んでキャンディに対応してきたが、盗みを働いては流石に契約も何もない。犯罪なのだから。それでも、メキシコに新しい仕事場として探し出し、翌日出立させることとしたのは、少なくとも形式上はポニーの家との契約も満たすことになっている。

ラガン夫人は大人なのである

これら行動から分かる通り、ラガン夫人はキャンディのしでかしたこと(実際の原因はニールとイライザにあるのだが)に段階的にキャンディを処遇しており、人から非難されるようなことは形式的にはしていないのである。ラガン夫人の落ち度は、自分の子供たちがとんでもない悪党であることを最後まで知らない、知ろうとしない?ことである。

結論

子供の教育という点では、ラガン家が一番熱心であるし、契約、人とのつながりも大切にする家である。では、なぜニールやイライザのような子が育ったのか…それこそが子育ての難しさと片付けることもできるが、アンソニー、ステア、アーチーがニールとイライザの性格を形づくったという考えもできる。