Time is Priceless

時は金では買えません

【キャンディ・キャンディ】イライザの守りたいものと破壊者としてのキャンディ


イライザは本能的もしくは意識して何かを守りたいのではないだろうか。そして、そのようなイライザの前にいつも立ちふさがるのがキャンディ。だからイライザはキャンディを追いやろうとするという見立てはどうだろうか。

ラガン家の立場

「キャンディ・キャンディ」が、キャンディ側の視線で描かれていることに注意が必要だが、ラガン家は、アードレー一族の中でそれほど高い位置では無いのではないか。アンソニーやステア、アーチーが親元を離れエルロイ大おばさまと暮らしていることもあるが、各人の門を作ってもらっているアンソニーら3人とラガン家のニール、イライザとは扱いが違うようにも見える。家格の差は「キャンディ・キャンディ」では明確に描かれていて、狐狩りの際に乗る馬は、アンソニーとアードレー家の養女であるキャンディは白馬に乗り、ステア、アーチー、ニール、イライザはそうではない。また、話中ではラガン夫人は登場機会が多く発言も多いが、ラガン氏は、その特徴的な髪型では目立つが、ほぼいてもいなくてもストーリー上関係ない存在感のない人。このことから、ラガン夫人はアードレー一族の出であるが、ラガン氏の実業界等外部での地位かラガン夫人のアードレー家の中での地位が元々低いためか不明だが、アードレー家でのラガン家の地位は低い。このことをラガン夫人は気にしていて、イライザに立派なレディとなることを求め、息子、娘の教育に熱心になっているのだろう。キャンディがアードレー家の養女となった最初の夕食の際、ラガン夫妻とニールにイライザもいるが、その場でラガン夫人はイライザに「いいことイライザ だれにもまけないくらい上品にふるまうんですよ」と言っているのはそれを端的に表すエピソードである。キャンディ、エルロイ大おばさま、アンソニー、ステア、アーチーと家族であるラガン夫妻、ニール、イライザしかいない夕食会で「だれにもまけないくらい上品にふるまう」必要がなぜあるのか。それはラガン家の地位を上げるためなのである。エルロイ大おばさまにキャンディよりイライザの方がレディであることをアピールしたいのである。ラガン夫人は、信用を得ることには時間がかかるが失うのは一瞬であるという大人の考えでもものを考えている。ラガン家の地位を何かのきっかけで一瞬で上げようなどとは考えず、少しずつ高めていこうと考えているのだ。だからこそ身内の食事会さえもエルロイ大おばさまへのアピールの場としようとするのである。

イライザの立場

では一方で、イライザはどのような立ち位置で生きているのだろうか。まず母親であるラガン夫人に逆らうような言動は見られない。故に親に対しては絶対服従の可能性はある。何と言ってもラガン夫人はイライザの生みの親である。大人になって感情をストレートに出すことは少ないだろうが、それなりの性格である可能性は高い。まだ子供のイライザである。ラガン夫人に逆らわないということは、自然とラガン夫人の考えが刷り込まれている可能性は高い。アードレー一族中のランクを気にすることもその1つである。そして、信用を得るには時間がかかるが失うのは一瞬という考えも同じく刷り込まれてはずだ。だからこそ、キャンディを度々罠にはめるのである。テリィとキャンディの仲を、たった2通の手紙で引き離すことに成功したのは、信用を失うのは一瞬であることの例である。

イライザの思考

イライザに刷り込まれた信用を得るには時間がかかるが失うのは一瞬という考えにより、イライザの性格は保守的にならざるを得ない。新しいこと勝手なことには慎重にならざるを得ない。慎重なのであって絶対にダメというものではない。新しいことも勝手なことも、自らの地位向上にプラスとなると判断できれば実施することはできなくはない。ただしリスクが取れないので、結局、やれることは限られてしまうし、タイミングを逃してしまう。

破壊者キャンディ

保守的な思考のイライザは、今の状態をまず確保した上で、改善していくという生き方であるが、その前に突然現れたのが、キャンディである。キャンディの考え方はイライザとは大きく異なる。キャンディは、周りにどう思われるかより自分が何をしたいかを優先する。このため、ラガン家でのひどい仕打ちに対しては逃げようとするし、アンソニーが死んだ後はアードレー家を出るし、テリィと別れた後は聖ポール学院を出て看護師になるしと、何か起きた際に今の状態を維持しようとするのではなく、自らの環境をガラッと変えてしまう行動に出る。これは、信用を積み上げて得ていくという発想のイライザにとっては信じがたい思考のはずである。このためキャンディは、イライザにとって、自らに何も影響しないのであればよいが、関わりを持ってくるとなると話は別で、関わりたくない除外したい人物なのである。キャンディが自らの環境を破壊するのは勝手だが、それに巻き込まれてはたまらないからである。しかし、出会いからしてイライザの話し相手としてキャンディは現れており、2人は近すぎる関係なのである。

イライザの守ろうとしたもの

イライザは今の環境を守ろうとしているだけなのである。レイクウッドにいた時も、アンソニーに憧れながら、穏やかに過ごしていたはずだ。そこにキャンディが現れ、アンソニーどころかステアもアーチーも、キャンディに夢中になってしまうのを見せられる。キャンディがこなければと思うのも仕方ない。その意味で、聖ポール学院行きはイライザにとってはかなり不安な出来事であったと考えられる。環境が変わり、一から人間関係を作らなければならないからだ。しかし、これはエルロイ大おばさま及びラガン家の決断なので、アードレー一族の一員としてイライザは拒否できない。それでロンドンに渡る。幸い兄ニールと親戚のステアとアーチーもいるので全く見知らぬ環境というわけではないが、しかし男女共学ではないので、不安を拭えなかっただろう。それでイライザはどうしたかというと、友達を作るという真っ当な手段で環境をより良くしようとした。そしてテリィをみつけ憧れるようになった。とはいえアプローチすることはしない。テリィと接点が全くないという環境を認識しているからだ。しかしキャンディは違う。新しい環境に入っても、特に自ら友達を作ろうとはしない。パティは向こうから近づいてきたし、アニーはそもそも知っている。キャンディの聖ポール学院での女子の交友関係は以上である。自らの環境を考えるにあたって友達を作るという発想がない。まずは人間関係を築くことから考えるイライザとは真逆のアプローチなのである。イライザの目には、キャンディはイライザの守ろうとしたものに全く価値を置かない振る舞いをする人間に映ったはずだ。それがイライザがキャンディに対し敵意をむき出しにする理由である。その意味で、キャンディが自分の話し相手としてラガン家にやってきた時の嫌がらせのは一過性の可愛いものであったが、キャンディの思考パターンを知るにつれ、イライザのキャンディへの仕打ちは可愛げのないどころか敵意むき出しとなっていったのは理解できる。

嫌がらせの変遷

ラガン家に来た当初の嫌がらせは、水をかけられる、ラガン夫人お気に入りの花瓶を運搬中に猫をけしかけられ割ってしまう等のその場でおしまいのなさものである。しかしキャンディがアンソニーやステア、アーチーと仲良くなると、キャンディを追い出すための策を練り始める。イライザの嫌がらせが極まるのは、聖ポール学院で密かに憧れの感情を持っていたテリィと仲良くなれないばかりでなく、自分はテリィから嫌われてしまい、テリィはキャンディにぞっこんとなってしまうのを今後の学生生活で見せられるのは、自身の学院生活において受け入れられないと考え、テリィもキャンディも窮地に追いやる陰謀を巡らす。これがイライザの嫌がらせのピークで、これ以降はキャンディとイライザは異なる世界で、それほど接点なく生きていくので、テリィの舞台の観劇がらみで多少の嫌味を言う程度となる。イライザとしては別なフィールドにいるキャンディに対しては手も足も出せず、口で嫌がらせするしかないのである。イライザが口さえ出せないのがアードレー一族絡みである。イライザのラガン家は、本家のアードレー家に刃向かうことはできない。そして本家アードレー家の養女がキャンディなのである。そんな中、物語の最終盤でキャンディへの嫌がらせの同志であったはずの兄ニールがキャンディに惚れてしまい結婚しようとするのである。イライザもキャンディの徹底した破壊者ぶりに参ったであろう。これにはニールに対し絶交とまで言い放ってしまう。しかし、イライザはラガン家の人間である。兄ニールとアードレー一族の長の養女であるキャンディが結婚すれば、アードレー一族におけるラガン家の地位が高まることは理解できている。それゆえ婚約式の際にはその場に出席しているのである。婚約式が始まる直前の場面ではイライザの描写はないが、心中穏やかでないはずだ。しかし取り立てて描写するほどではない扱いとなっている。しかしキャンディは婚約式をドタキャンする。予め婚約式をしないと言っていれば混乱は小さく抑えられるはずが、婚約式の場でドレスまで着込んだ後に婚約しないと宣言するのがキャンディである。急な変化でなく流れの中での変化を好むイライザにとってこれは衝撃的なことであったろう。もはやイライザの嫌がらせができるフィールドではないところでキャンディはキャンディらしさを発揮しており、残念ながらイライザはこのシーンの描写はない。ウイリアム大おじさまがニールに向かってキャンディと結婚させられないと言った際に初めてイライザも描かれるが、アードレー家の上層部のレベルの話なのでイライザはただ青ざめるだけで、キャンディへの嫌味どころか声さえ発せられない。ニールの婚約絡みでは全く何もできないのである。

イライラの生き方

聖ポール学院でテリィとの仲を引き裂いた頃がピークで、それ以降はキャンディのフィールドがイライザの直接にしろ間接にしろコントロールできないフィールドにキャンディが行ってしまったため、イライザはキャンディが自分と違い自由気ままに生きていることに対しイライラしても嫌がらせできなくなる。ただキャンディの自由さを眺めるしかなくなるのである。これがイライザの生き方なのである。そして、そのような窮屈な環境にいるからこそ、勝手気ままで何かあれば、今の環境を投げ出してリセットしてしまうキャンディに対して負の感情を抱くのである。