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【北斗の拳】第1巻 ケンシロウ登場 


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第1巻は、ケンシロウのお披露目ですね。まあ、最初のシーンは、後のケンシロウから見るとあり得ないほどの弱々しさ。やはり人間の体は水で出来ているのだなと思わざるを得ない迷シーンである。その後は、いつ水飲んでいるのかわからないくらい、飲食シーンは少なくて、ケンシロウの体は何で出来ているのだろうと思わざるを得ない。

第1巻 第1話 心の叫びの巻

最初は生理的欲求に弱かった?

「み…水…」(ふらつきながら)
「み…水…」(網の罠に捕われながら網から手を差し出して)
これが、「北斗の拳」におけるケンシロウの最初のセリフだ。

確かに人が生きていくには水は必要だ。
どんな武器にもどんな拳にも決してひるまず果敢に挑むが、生理的欲求だけは生物で有る限り克服できない。まあ、ケンシロウとはいえヒトなのだから当たり前だけれど。

この弱点が「北斗の拳」の面白さを生む可能性があった・・・

少年ジャンプはこれを許さない

・・・がしかし、やはり少年読者は強いものを好む。
しかも連載は少年ジャンプである。
だから、この弱点を後につなげることはできなかった。
しかしこの「北斗の拳」に限るならば、ケンシロウから生理的欲求を排除したことが、一層「北斗神拳」の神秘性を生んだのであろう。

正確には、ケンシロウの生理的欲求を排除したのではなくて、「ユリアに会いたい」という本能だけで判断し行動しているというのが正しいかもしれない。
これはある意味、「北斗の拳は愛がテーマ」と言われることのゆえんかも知れない。
・・・が、ここでいう愛はもちろん「愛情」とかいうものではない。「本能的愛」だ。

で、物話は、ケンシロウが捕まって村の牢に入るとそこにバットがおり、牢の番人としてリンがいるという按配。

「北斗の拳」の最重要人物達が良いテンポで出会うわけだ。

病気の治癒設定の絶妙さ

話は変わるが、「北斗神拳」の特徴は「内部の破壊」であり「病気の治癒」も可能であるという。この後々重要となる前提を言葉ではなくエピソードで示している。
特に「病気の治癒」に関しては、この特徴があるおかげで、最終的には治癒しなかったとはいえ、レイは女を守るヒーローになれたし、トキ登場のエピソードが非常に印象的になったし、それ以上に、ユリアがケンシロウと結ばれる際のはらはらした展開が可能になったわけだ。

原作と漫画のスピードが冴える。
しかしそのテンポが少々仇となる。

リンの力水

フラフラで、戦いに関しては素人集団の村人の罠にかかっていながら、リンのくれた水一杯で、牢の鉄棒をひん曲げて脱獄し、村を襲う敵を簡単にやっつけてしまう。

そりゃないだろう。
加えて雑魚の長に対して「北斗百裂拳」をおごるなど、第1話だけに結構豪華だけど、指先一つでダウンさせれば良いのではなかっただろうか。

第1巻 第2話 怒り天を衝く時! の巻

初期設定で想定された唯一の敵(のはず)

第1話で北斗神拳の特徴と味方の主要メンバーを紹介し、第2話にして(初期設定では)最強の敵シンの影がちらつく。

恐らくこの話を作った時点ではラオウ及び北斗4兄弟の構想は無かったと思う。

それはともかく、第2話では次のセリフが出てくる。
(もう食うもんねえのかよというバットに対し)「さっきおまえにやったのが最後だ」と
涼しい顔して言うケンシロウ。

「さっき食べたのが」ではないところがいい。

ケンシロウは食べていない含みが残るからだ。

しかし、第1話の水を欲して白目むいていたケンシロウと同じ人物とは思えん。
確かに汗や尿(=飲み物で補わなければならない)はコンスタントに排出されるが、消費カロリー(=食べ物で補う)は鍛えられた体であればコントロールできるのかも知れない。
しかしそれも限度が有るだろう。自分の食料を勝手について来た者にやるなど理解に苦しむ。

技の大サービス

第1話に引き続き、雑魚に対して大サービスしており、雑魚ナンバー2に「岩山両斬波」を、
雑魚の長には「北斗残悔拳」なんていう高尚な技を繰り出す。

ちなみに題名は「怒り天を衝く時」であり、
本来というか普通に使われる「怒髪天を衝く」でないところがナイス。

第1巻 第3話 KINGの逆襲の巻

ここでも雑魚の長に対し大技「交首破顔拳」が出る。別の長には「五指烈弾」。大サービスである。

第1巻 第7話 狂乱の殺人者の巻

ハート様に「北斗柔破斬」をサービス。ハート様なので、特別に編み出した専用技を使っている。

第1巻 第8話 執念の炎の巻

"おやじ"という設定の矛盾

ここで今後の「北斗の拳」の話のつじつま上、厳しい箇所がでてくる。
1年前の話としてユリアとケンシロウが「おやじ」の墓参りに来ている。
この「おやじ」が「実父」のことであれば、それは場所が問題になる。
つまりケンシロウは未だ幼児の時にラオウに抱かれ海を渡って現在の地に来たのであり、実父を特定することは不可能で、仮に海を渡って帰省していたとしても、ラオウを倒した後かの地に向かうときのケンシロウの手際の悪さが説明できない。

一方この「おやじ」が師リュウケンとも考えられるが、
墓を前にしたケンシロウのセリフ,
「おれのことは心配いらないおれには北斗神拳が」
なんてわざわざ前代北斗神拳伝承者に対して言うセリフではない…
と思いきや、シンが現れるとケンシロウの致命的な発言が飛びだしてしまう。
シンに対して「よせ! 争ってはならぬという父上の教えを忘れたか」なんて言うのだ。
そして「おやじ」の声として「お互い力をあわせそれぞれの拳法を伝承するのじゃ」が飛びだす。
また、よりにもよってシンまでが「そんな老いぼれのたわごとなどとうに忘れたわ」なんて言ってしまう。

え?

ケンシロウとシンは兄弟なのか?

北斗神拳を操るケンシロウと南北聖拳を操るシンが兄弟?
まあ、かろうじて「兄弟であるということは確定的ではない」と言えるが、ここまでを普通に読めばケンシロウとシンは兄弟と思うだろう。

それだけでもおかしいが「お互い…それぞれの拳法を伝承するのじゃ」というのは更に変。
「おやじ」が一人で身につけた2つの拳をわざわざ2つに分けてそれぞれを伝承させるなんて。

伝承者になれなかった時の保険

武道はそんなものだっけ。

武道は勝つためのものだから、2つをマスターしたらそれぞれの長所を使って1つの新しい拳法にすべきではないのか。
それより一子相伝の「北斗神拳」を学んだのだから「南斗聖拳」まで学ぶなよ。
というか一子相伝の「北斗神拳」を伝承できなかった時の保険で「南斗聖拳」を習得したのか?

そういえばジャギも「南斗聖拳」使ってたっけ。
それはともかく、伝統芸能ではないのだから流派の混合を嫌うなんてありえないのではないか。
ゆえに「おやじ」のセリフは理解しがたい。
しかも「おやじ」が「南斗聖拳」の伝承者であるのであれば、南斗の最重要人物がユリアであることをケンシロウもシンも知らないなんて言うことがあるだろうか。
加えて、「おやじ」は「北斗神拳」と「南斗聖拳」は力を合わせなんてシンとケンシロウに言うが、それでは南斗聖拳最強の拳法「南斗鳳凰拳」のサウザーに対して失礼であろう。

連載漫画の難しさ

まあ、このあたりは既に作者が描(書)いていて違和感を感じていると思われ、
もっと浪花節的におやじとのエピソードが描かれてもよさそうだがそうはなっていない。丁度この話を書いている頃に連載延長が決まったのではないだろうかと邪推する。