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【北斗の拳】第7巻 トキ(偽アミバ)登場。どっちがどっちなの?


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本物のトキが登場する巻です。

第7巻 第2話 哀しき賭け! の巻

最初のコマでいきなり「おいこの勝負に晩飯賭けねえか」とケンシロウとウイグル獄長の闘いを監獄の衛兵みたいなのが言っている。

もちろんこの賭けが題名の「哀しき賭け」というわけでは無い。
「哀しき賭け」とは末っ子を人質に取られカサンドラの衛士となっているライガ、フウガがカサンドラに生きる全ての者に再び光と生を取り戻してくれるだろうとケンシロウに賭けるということだ。

しかし題名とかけた別な賭けの話を頭に持ってくるとはなかなかしゃれた演出ではある。
さて、この「晩飯賭け」のエピソードのおかしさはケンシロウに賭けようと思っている方が賭けを申し出ている点にある。
自分の仕えるウイグルが負ける方に賭けるとはどういうことかわかっているのだろうか。
もし自分が賭けに勝った場合のことを。
晩飯賭けてる場合じゃないと思う。早く逃げないとケンシロウにやられると思うべきだよ普通。

結局この賭けを言いだした男は、しょせん岡目八目の読みであり自分の身の安全までは読めないということか。
賭けに負ければ晩飯をおごらねばならないし、賭けに勝ってもおごってもらうより先に逃げなきゃならないのだから不利な賭けだと思うよ本当に。悲しいねぇ。

あ、だからタイトルが「哀しき賭け!」なのかな。

第7巻 第7話 北斗有情拳! の巻

監禁されたトキをケンシロウに会わせないように殺そうとした見張り2名は「トキを殺らねばおれたちが殺される!!」と言っている。このためか、トキは痛みを知らず安らかに死ぬ「北斗有情拳」でその二人を倒す。この二人は根っからの悪人ではないからだろう。このこと自体は別に良い。しかし、このように配下の者を支配した拳王の罪は重い。拳王=ラオウは、ケンシロウとの戦いに敗れた最後、平和のために闘っていたとかいうような話になるが、このような恐怖政治が「やむをえない必要悪」とはとても思えない。

この巻ではトキによるラオウに関する重要な発言がある。
「拳王の手下であったジャギ アミバも拳王の命令で動いただけ」
「アミバの発見した新秘孔もすべて拳王へ伝えられた!」

これはさすがに無理がある。
それまでのエピソードからは、ジャギ、アミバともに独立した小悪党であり、それぞれ手下を持った一国一城の主という感じで、「拳王の命令で動いた」ようには見えない。

まずジャギから。
確かにジャギは、兄弟では兄が優れていると公言しているわけであるから、兄弟子であるラオウに従うことも考えられなくも無い。しかし、ジャギのこの兄優秀論は単にケンシロウへの負け惜しみから出た感が強く、現に師リュウケンに伝承者として兄二人をさしおいて自分を指名しろと兄優秀論に反したことを言っている。だから何らかの納得できる合理的理由が無ければ単に「ラオウの弟」というだけでジャギが「拳王の命令で動いた」とは思えない。
これはジャギの行動を見ても言える。ジャギは胸に七つの傷を付けてまでケンシロウになりすまして悪虐非道の行いをするのであるが、この行為はラオウにとって意味のあるものとは思えない。百歩譲ってラオウがジャギのプライドを尊重してやってジャギの個人的恨みを晴らすことも兼ねた行動を取らせたと考えてみても、こんな姑息な形でのケンシロウへの復讐をラオウが望むとはとても思われない。ジャギが勝手にやったのだろうか。そうであれば、ラオウの統率はそれほどタイトではないとは言え、「拳王の命令で動いただけ」というのは言いすぎだと思う。

一方、アミバである。これも「拳王の命令で動いただけ」といえるか疑わしい。
新しい秘孔を探すのがラオウからの命令であったのであれば、わざわざトキになりすます必要は無いのではないだろうか。というより、ラオウが、アミバに研究所を与えデクも供給してあげたほうが、非常に合理的に新秘孔が見つかるはずなので、成り立たないと考えるべき。ご丁寧にも背中にトキの負っている傷まで作ってまでトキのフリをする必要は無いだろう。
しかし良く考えてみると、トキの背中の傷のことなど北斗の兄弟でないアミバは知るわけは無いので、やはりこれはラオウから得た情報なのかとも思う。でも…トキはラオウの実弟で結構ラオウはトキを愛しているみたいだから、そのトキのマネをジャギがすることをラオウは許さないだろう。

以上から、
ジャギ、アミバともに「拳王の命令で動いた」と断定するのは難があるので、
「拳王の手下であったジャギ アミバも拳王の命令で動いただけ」
「アミバの発見した新秘孔もすべて拳王へ伝えられた!」
というのはさすがにトキによる無理なこじつけだといわざるを得ない。

では、「なぜトキはそのようなこじつけ話をケンシロウにしたのか」という疑問が残るが現時点では私にはわからない。
幽閉されて妄想が事実と区別できなくなったのかもしれない。

第7巻 第7話 北斗有情拳! の巻

よく考えてみれば、ケンシロウ、ジャギ、トキ、ラオウの4人の兄弟のうち、ケンシロウとトキには偽者(ジャギとアミバ)がいたことになる。世の中が混乱すると偽者が出てくるものであろうが、ラオウに対する本格的な偽者が出てこなかったところはちょっと寂しい。
これがなぜかを考える。
ケンシロウもトキも単独行動をする者であり、本物の活動範囲も限られるためそれ以外では偽者の活動余地が出てくるが、ラオウの場合、配下の者や軍をまとめて組織的に活動させており、偽者が活動できる場所が限定されるという点が他の二人と決定的に違う。ここに偽者が出ないポイントがあると考える。

まあ、あれだけ乱れた世であれば拳王先遣隊の偽者は結構あったかもしれないとは思う。

さて、この巻では、トキはこんなことも言っている。
「拳王の前に人はなく拳王の後にも人はない!人間はおのれひとり!それが世紀末覇者拳王の狂気の野望!!」
トキはラオウの実弟であることを留意して欲しい。
ラオウは少なくともトキに対しては自分と対等な「人間」として接していたと思うのだが…。
兄の心弟知らずといったところか。

もうひとつトキのセリフ。これも良く考えると意味深。
ケンシロウを評して。
「たくましくなったな…ずいぶん自分の血を流してきたのだろう」
…というより、ケンシロウがずいぶん流してきたのは他人の血だろう。
自分の血の何万倍もの血を流しているはずだ。
やれやれ。

トキさえも結局は兄弟の枠組みのなかでしか世界を見ることができないのだ。
暗殺拳である北斗神拳の限界でろう。