MIU404におけるテーマの1つに、「救いたいと願う人を救えるか」と言うものがあると考える。しかもその救いたい人というのが、家族や恋人といった者たちではないところが深い。
具体的ケース
志摩のケース(香坂義孝)
概要
志摩は、相棒の香坂義孝を、その死後になって救いたかったと願ったが、もちろんどうにもならなかった。
時期
MIU404開始時点で既に救済対象死亡のバッドエンド
伊吹のケース(蒲郡慈生)
概要
伊吹は、恩師の蒲郡慈生を救いたいと願ったが、蒲郡は、殺人を犯し逮捕され、願いは叶わなかった。
時期
第8話で救済対象闇落ちのバッドエンド
桔梗+伊吹+志摩のケース(羽野麦)
概要
桔梗は、犯罪を証言した羽野麦を匿っているが、桔梗が自らの危険を顧みず他人に対し優しさを見せたため生命の危険が生ずるが、桔梗を始めとしたMIU404の活躍により一命を取り留める。
時期
それまで伏線として貼られていたが、第9話でメインのエピソードとして浮上。
羽野麦は、救えなかった香坂と蒲郡の代替となる人物
結局、救いたかったが救えなかった人をそれぞれ持つ伊吹と志摩は、羽野に対し特別な感情を持って当たっていると考えて良い。特に、リアルタイムで蒲郡を喪失した伊吹にとって、羽野への救いたいという思いは特に強いと思われる。
救いの話は第2話にもある
「救いたいと願う人を救えるか」がテーマとなるエピソードは、既に2話において、第4機動捜査隊のメンバーとは関係ない話として出てきている。一般人である田辺夫妻が乗る車に、たまたま乗り込んできた殺人犯加々見。狭い車内で加々見と過ごすうち、殺人犯と分かった上で田辺夫妻は加々見を守ろうとする。この話の結末は、加々見は逮捕されたとはいえ、田辺夫妻と心を通わせており、未来に光がある終わり方となっているので、MIU404の中では最上級のハッピーエンドコースである。
救いの話は第9話にもある
成川の麦に対する感情も、当初は単に賞金首としか思っていなかったものが、騙そうと会話しているうちに同情が湧き、結局、自らの命をかけてでも助けようという感情になっていた。これは明らかに「救いたいと願う人を救えるか」にあたる感情である。辛うじてハッピーエンドコースである。
救いの話は九重にもある
九重と成川の関係。自分が取り逃がした成川以外の高校生は、ちゃんと逮捕され更生の道を歩んでいるが、成川はその機会を得ていないことから、自分を責めている。これは九重にとっては、救いたいという感情を伴う関係である。ハッピーエンドコースである。
なぜ九重はハッピーエンドコースを辿れるのか。これは、ドラマ設定上のものだと思われる。伊吹や志摩は、人間的に問題がある設定がある。しかし、九重は今の所それがない。刑事としての洗礼を浴びている九重にとって、この段階でダークサイドに落とすのは、MIU404のシリーズ化を考えた場合、あまり良いものではない。九重のポジションは、あくまで他人の心を組むことのできる真面目な若手刑事というものの方が、扱いやすいはず。この設定を続けるためには、刑事としての苦悩があっても、しばらくしたら解決するような課題しか課せられないだろう。
救いの話は陣馬にはない!
第4機動捜索隊の4人の中で、今のところ陣馬だけが、救いに関わる話が無い。これはどのような意味を持つのだろうか。陣馬は、九重に対し、
毎度そんなに反省してたら身が持たねえんだよ
俺たちの仕事はできなかったことを数えるんじゃなくてできたことを数える
と言っている。これが何かを示唆しているのかもしれない。つまり、勤続35年の陣馬にとっては、救いに関わる感情は心の奥に蓋をして、感じないようにしているという意味ではないか。そう考えると、蓋をした感情が、何かの拍子で蓋が開いてしまうことが可能性としてありある。残り話数から見て、それは、久住なのではないだろうか。そうだとしたら、結構熱い展開になる。
第4機動捜索隊で、最年長者と最年少者がペアを組んでいること
桔梗隊長の気遣いだろう。まあ、それ以前に、伊吹と志摩のどちらも九重と組ませるのは、九重にとって可哀想であろう。
視聴者への問いかけ
救いたいと思う人を救いたい…というテーマは、そのまま、視聴者へ向けられているのかもしれない。
あなたには救いたいと思う人はいるか?手遅れになる前に、救おうとしているか?
あなたにとっての羽野麦はいるか?
…と。