樹木と浅羽が互いのことを「好き」な気持ち。そこに偽りはないだろう。しかしこれ、恋愛感情なのだろうか。
- キスするイメージがわかない
- 他に代替する好きはないか?
- 戦友関係の居心地良さ=「好き」
- 「戦友」と「帰る場所」
- 先回りする里保と新谷
- 自ら首を絞める里保と新谷
- 恩人という別な切り口
- 恋愛だとすると将来のイメージもわかない
キスするイメージがわかない
あくまで個人的な印象なのだが、樹木と浅羽がキスするイメージがわかない。これが、2人の「好き」が恋愛感情ではないのではと考える直感的理由。
他に代替する好きはないか?
親友や同志も、互いのことが「好き」と言える。また、ライバルも相手を特別な存在として意識するという点で「好き」と言える。他にも「好き」のパターンはあるだろうが、樹木と浅羽の関係は、戦友なのではと考える。
戦友関係の居心地良さ=「好き」
樹木も浅羽もやっていることの根幹は、ココエブリィのお客様に良いサービスを届けたいということである。しかし方向性やアプローチは違う。そうでありながら、互いのやりたいことを妨げず、インスパイアし合う。この関係の居心地の良さ、これが樹木と浅羽の「好き」なのではないか。
「戦友」と「帰る場所」
戦友は、戦時は四六時中行動を共にするが、それはプライベートまで一緒にするものではない。つまり、戦友には、それぞれ帰る場所が別にある。ここが大切。
先回りする里保と新谷
里保と新谷は、樹木と浅羽が好き合っていることを察し、里保は先回りして身を引くし、新谷は樹木を試すことをする。これは実は間違い。里保も新谷も恋人というポジションにいる。その位置を、樹木、浅羽と争っていると考えて行動している。しかし、樹木と浅羽の間にある「好き」は恋愛感情ではないのである。
自ら首を絞める里保と新谷
樹木と浅羽の関係は、恋人ではなく戦友と考えると、里保と新谷の行動は誤りである。彼らの行動は、樹木と浅羽の戦友関係を恋愛関係と錯覚させる方向にミスリードしているのである。つまり、里保と新谷は、自ら恋のライバルを作っているのである。確かに里保は浅羽を、新谷は樹木を恋愛対象としている。このため、相手に近づいてくる異性を恋のライバル認定してしまうのはやむを得ない。しかし、冷静に浅羽と樹木の関係を見極めれば、それは恋愛関係とは違うことがわかるはずである。更に、浅羽自身、恋人は里保と明確に考えているところに、自ら浅羽を焚き付けたりしている。それで浅羽は、樹木に対する感情を恋愛感情と錯覚してしまうのである。新谷のクリスマスまでのお試しも同じで、新谷は浅羽を恋のライバルと間違えてしまったことによる行為なのである。
恩人という別な切り口
樹木と浅羽が、恋愛感情ではなく戦友的な感情で好きと思っていると書いたが、別な切り口も考えてみる。
樹木は元アイドル。しかも、自分が首になった後、所属したグループが売れたという過去を持つ。強烈な上昇志向がある人間だろう。
一方、浅羽は、経営コンサル。こちらも上昇志向の塊だろう。
つまり、樹木と浅羽は、共に、強烈な上昇志向を持つ人間として設定されているのである。そして、アイドルを首になり、生きる目標が定まらない樹木を、上昇志向を満たすスタート台に再度乗せてくれたのが、浅羽である。つまり、浅羽は恩人である。一方、会社を買収し高く売って利益を上げるというビジネスをしてきた浅羽に、会社に愛着を持って、心から会社を良くするための経営を行うことに気づかせてくれたのが樹木である。つまり、浅羽にとって樹木は恩人なのである。
戦友も恩人も、一方がもう一方に対し、強い信頼を寄せているという関係が双方向に存在するという点で共通する。
恋愛だとすると将来のイメージもわかない
これも個人的なものであるが、キスのイメージと共に、2人の5年後、10年後の姿に恋人関係がイメージできない。一方、樹木と新谷の老夫婦が営む明るいケーキ屋さんやイメージできるし、リタイヤして海外でのんびり暮らす浅羽と里保までイメージできる。ただし、樹木と浅羽がビジネスパートナーとして切磋琢磨する関係なら10年後、20年後がイメージできる。やはり、樹木と浅羽が好きと感じるのは戦友もしくは恩人的な意味と考えた方が理解しやすいのである。