Golden Time

時はお金で買えません

【最愛】第10話 最終回 加瀬の最後の晩餐


ドラマのオチ的には、タイトルの『最愛』は、加瀬の梨央への思いという意味なのだろうが、個人的には後藤の梓への思いの方がピュアさがあるので、こちらを上に評価している。

頭を打った人を働かせる真田ウェルネス

後藤は入院中なのに働いているよ。自主的にやったみたいだが、人使い荒い組織は自主的にやらせる体裁を取るものだからね。梓のことを心配するのは分かるが、頭を打っているのだから後藤はもう少し自分の体を大切にしてほしい。

指紋

取って付けたように台風の夜の薬瓶が出てくるの、今更感ある。しかもはっきりしない指紋とか意味のない証拠。ちょっとだけハラハラさせる小物ということ。

新薬の認可

認可は良いけど、優の治験結果は良かったと言うことか。過去の記憶は蘇らないと言うことが幸せだったということか。

なぜか建物内をうろうろして逃げない加瀬

大輝との電話の駆け引きも良いけど、とにかく建物から早く出ろよ…と思っていたら、ちゃんと外に出た。警察が迫っていることに気づいていなかったのか?逆に大輝の電話は追い込んでいるようで、加瀬を逃がそうとしていたということか。

最後に美味しい後藤ことミッチーこと及川光博氏

美味しすぎるわ。最後の最後にサラッと美味しいところを持っていくミッチー。このパターン結構あるが、『最愛』ではその中でも群を抜いて美味しい役を得ている。全ての罪を被ってこれからは一人で逃げなければならない加瀬よりも、自首するのは梓への思いからという潔癖さが美味しい。いや、美味しすぎるわ。加瀬の生き方は、全てを一人で持っていくために人生からも逃げる可能性がある点が厳しい。これは3人の死に関わってしまっていたことと不正経理でしかないことの違いとも言える。

加瀬の終わり方

加瀬だけが不幸を背負っているということか。これまでも、これからも。たまたま梨央の進学の話をするため岐阜へ達雄に会いに来たその日に事件があって巻き込まれ、渡辺父の時もなぜかそこに居合せ、最初は殺す気なかったのに渡辺父の言動から殺すことを決意し、橘しおりの時は悪いタイミングが重なって落下させる。間が悪い。加瀬は、本人の意図しなかったところに殺人の真の原因がある巻き込まれ型の犯罪者。不幸だ。

加瀬は達雄の言葉を引きずった

法律のものさしで言わんでください!私は私は家族の話をしとります

という言葉が、その後の加瀬を運命づけた。家族愛というものを加瀬は達雄から学んだということか。

ラスト近く、加瀬が大輝との電話で、

法律では守れないものがあるからです

と言っているのは、達雄の言葉と同じ意味であり、加瀬の考えがあの夜の達雄の言葉によって変わったと考えることができる。そして加瀬の言葉には明言されていないが、達雄の「私は家族の話をしとります」が、その後の加瀬の行動を方向づけたのだろう。

その後、達雄が亡くなり、偶然にも加瀬が梨央の後見人的役割を担うようになったことから、加瀬が達雄の代わりの「家族として」梨央を守ることにしたのだと。

加瀬の最後の晩餐

梨央の自宅での優、加瀬三人での食事シーン。当たり前のように三人でいただきますと言っている。しかし梨央と優は自分の箸を使い、加瀬は割り箸。食事の準備をしているのは優なので、箸も優が準備しているのだろう。梨央は分からないが、優にとっては加瀬はお客様であることを表している。しかし、加瀬のこれまでの生き方を見るに、加瀬は家族として接してきて、家族としてこの食事をしたのだろうなと思う。つまりこの食事は、加瀬にとっての最後の晩餐である。

加瀬の遺書

ひとつの目標を達成した今、次の目標に向かいます。人生最良の十六年間に感謝します。

退職届の隣に置かれた一筆箋のこの文言。次の目標と将来のことが書かれているように見えながら、そもそも達成した一つの目標って何なのかというところで止まってしまう。これは遺書にしか見えない。

達成した一つの目標として考えられるのは、梨央優姉弟の独り立ち。梨央は社長をしていたくらいだから独り立ちできていたが、記憶障害のある優については保護が必要と考えていたのだろう。しかし薬のおかげでそれも解決した。それどころか加瀬を見習って弁護士になりたいと言ってくれた。加瀬は梓の命を受けて梨央の側に付いたが、心の中では達雄の気持ちを受け継いだということだろう。

では、姉弟の独り立ちという一つの目標を見届けた今、次の目標は何かとなると…姉弟の将来の妨げとなることを消すこと。つまり3人の死の秘密を、自分が墓場まで持っていくことと考えることができる。そうなると逃げていてもいつか捕まる可能性がある。そうなると選択肢は自らの死となるのではないだろうか。未来のことも書いていながら、「これまでの人生最良の十六年間」ではなく「人生最良の十六年間」としていることからも、これから生きていてもこの十六年間以上に良いことはないという思いが出ている。

ただ、加瀬の最愛の人が梨央と優であっても、梨央と優の最愛の人が加瀬というわけではないのが悲しい。それでも加瀬は二人との時間を「人生最良の十六年間」と言うのである。やはり加瀬は梨央や優に対しては親的なポジションであり、一方的な愛情の関係なのである。

橘しおりのアイデンティティ

私は、必要とされてるって、誰かの役に立ってるって、実感がほしいんです

これはまあ分かるが、その考えのみで真田ウェルネスの不正を追いかけてきたと言うのだろうか。それはともかく、橘の死は、ストーリー上、全く意味がないと思うのだが。橘が生きていたら何か変わっただろうか。橘の死は、単に「第三の殺人」というストーリーの賑やかしの役割しか無い。ただ、橘しおりの「必要とされてるって、誰かの役に立ってるって、実感がほしいんです」という想いは、加瀬にも共通するもので、それゆえに加瀬は梨央のために行動してきた。だからこそ、橘は加瀬に絡んで死なせてはならなかった。その辺りから橘は、加瀬が手を下したのではなく、転落事故ということにしたのだろう。

そもそも、橘はなぜ薬の承認まで待てなかったのだろうか。橘と加瀬のやりとり以降、承認されるまでの時間経過が実は何年もかかっていたということなのだろうか。ドラマの中での時間経過は、観ている側にはよく分からないので、橘が何年も待たされることが予想できるのであれば、そこまで待てないと言うのも分かる。