花岡と轟、花岡と梅子、花岡と梅子…この3ペアによる会話で花岡のキャラの解像度が上がっていくの凄い。セリフが長めで説明的ではあるが、花岡のこれまでの行動の不整合さ、冷酷さの理解ができるようになった。この3ペアの会話内容を全て知っているのは花岡だけというのが何とも良い。
"猪爪寅子め…"
最初は、花岡か寅子を恨んでるような感じでスタート。まあそうか、足と腰の捻挫に右腕を骨折。頭にも怪我という大怪我してるのだから。寅子も、連日見舞いに病室の前まで行きながら、勇気が出せずなのか謝れないのも理解できるし。
"直道のせいで、はるの中にも「女がいるのでは?」という疑念が湧いているようです"
「ようです」?これ、ミスリーディングなナレーションじやないのか?と思ったら、今回のラストでちゃんとラストで解決してくれる。『虎に翼』はこういう時、次回に続くみたいに焦らすかと思いきや今回は直道がなぜ憔悴していたか明かしている。
轟、花岡が退院するから付き添うために大学を休む
そこに寅子が駆けつけると。つまり、花岡、轟、寅子の3人のシチュエーションができる。
上手い演出だなと思ったらそうではなかった。その前に轟と花岡2人の時間があって、2人は寅子到着を待たずに退院しちゃうのか。意外性の展開。
"もう下手に出るのはやめだ。いっそこのけがの一件で、猪爪寅子を訴えて痛い目に遭わせた方が…"
この花岡のセリフを言い終えないうちに轟、
愚か者!
と一喝して平手打ち。いや、花岡は怪我でようやく退院できる人で頭打っている人だよ?
しかし轟のセリフが斜め前的なもので観てて意外性。
思ってもないことを、のたまうな。ここには俺しかいない。虚勢を張ってどうする?
なんだと?花岡は虚勢張っているというの?そして語る。「あの人たちは漢だ」と。花岡でなくても「はっ?」て言うなこれ。ただちゃんと補足するの轟が大学生という感じする。
俺が漢の美徳だと思っていた強さ優しさをあの人たちは持っている。おれが男らしさと思っていたものは、そもそも漢とは無縁のものだったのかもしれんな
轟、分かりが早すぎる。
何の話だよ
これは花岡、勘が良くないぞ。これで理解できない花岡に対し、轟は言い方を変える。
つまり俺が言いたいのは!上京してからのお前、日に日に男っぷりが下がっていくばかりだ。おれは非常に悲しい
これを経て寅子追いかける…が、「む…無駄足〜!」
この轟のセリフ、字幕では「男」を使っている。「漢」と使い分けているのね。
花岡、梅子に頭を下げる
花岡、本心から改心したか?轟の監視付き?な感じが気になるが。想定通りというかありがたいことに、花岡と梅子が繋がった!
花岡改心のきっかけは梅子!
轟の「思ってもないことを、のたまうな。ここには俺しかいない。虚勢を張ってどうする?」は、花岡が梅子に語った「カフェでチヤホヤされたくらいで調子に乗って浮かれたり、仲間になめられたくなくてわざと女性をぞんざいに扱ったり、帝大生に引け目を感じたり。皆さんを尊敬してるのに無駄にかっこつけたり、将来の数少ない椅子を奪われるようで、妬ましくて恐ろしく思ってしまったり。どの自分も嫌いで、どれも偽者というか、本当の俺じゃなくて…」と対応するのか。轟が予め簡潔に言っておいてくれて助かる。
最後の「どの自分も嫌いで、どれも偽者というか、本当の俺じゃなくて…」を梅子が否定するのカッコいい、漢だ。
「ううん。どれもあなたよ」
「人は持っている顔は一つじゃないから」
この流れ来たか。花岡を使って人には色々な側面があることを意図的に描いていたからね。裁判では、嘘をつく人が沢山出てくるから、その自覚を花岡に持たせ、かつ視聴者にも予告してるのだと思う。
「この期に及んで自己弁護ばかり」
「そりゃ、自分がかわいいのは当たり前!でも花岡さんが思う本当の自分があるなら大切にしてね。そこに近づくよう頑張ってみなさいよ」
梅子、花岡の言葉全てを受け入れた上で返す。これこそ母であり漢の言葉だ。
ちゃんと謝りに来ているだけで、うちの息子よりずっと立派!
つまりこの花岡と梅子の会話は、梅子は梅子で、花岡は花岡で現実には出来ない母と子の会話をしているのだよなぁ。切なさがある。
なんだ、結局みんないい人じゃない
…寅子の心の声。こういう風に単純にまとめちゃうのは、寅子が未だ人生経験が足りないというか、幸せに暮らしているからなのだよなぁ。轟はここで心の声を含めて何も言わないのが良い。しかしこれを描いておきながら今回のラストに繋げる製作陣どうかしてる。
寅子の幸せな暮らしを一変させ、人生経験積ませにくるのだから。
鍛錬が足りない
花岡と寅子の会話での使われ方は、感情の沸点が低い、感情を抑えられないという意味かな。
知らなかったけれど、普通に使われる表現なの?
本当の花岡さん
寅子:ここでは…せめて私の前では、本当の花岡さんでいてほしいです
花岡:本当に腹が立つ。ただでさえ、崖から落ちた日から誰といても何をしていても、猪爪くんのことが頭に浮かぶのに。これじゃまた君のことばかり考えてしまうだろ
まあ確かに花岡は寅子に"本当の花岡"の気持ちを伝えたとは言える。ただし言い方がミスリードしている気がするが。
"君のことばかり考えてしまう"
花岡が寅子への思いを語った言葉なのに、これが魔法の呪文となって寅子から花岡への気持ちにもなってしまった…のだが、寅子の気持ちは恋っぽいのだが、花岡の寅子への気持ちは、寅子を"漢"として考えている可能性があるのだよなぁ。そもそも今回のスタートは、轟から花岡への性別を越えた"漢"指南であったのだから。
父、贈賄容疑…?
そっちか。経営不振の家財差し押さえと思ってた。